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田中俊之「生きづらい中年男のための処方箋」

未婚男性の8人に1人が「生涯独身」を宣言…「なぜ(わざわざ)結婚したの?」と問われる時代に

文=田中俊之/武蔵大学社会学部助教
未婚男性の8人に1人が「生涯独身」を宣言…「なぜ(わざわざ)結婚したの?」と問われる時代にの画像1「Thinkstock」より

 2015年に国立社会保障・人口問題研究所が実施した「第15回 出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」によれば、未婚の男女に結婚について「いずれ結婚するつもり」と「一生結婚するつもりはない」の二択で質問をしたところ、男性(18~34歳)の12.0%が「一生結婚するつもりはない」と回答した。

 未婚男性の約8人に1人が「生涯独身」を宣言したわけである。1987年の時点では、4.5%と約22人に1人しか「一生結婚するつもりはない」を選ぶ男性はいなかった。結婚に対する意識が、大きく変わっていることがわかる。なお、未婚女性(18~34歳)でも、「一生結婚するつもりはない」という回答は、87年の4.6%から2015年には8.0%に増えている。

「一生結婚するつもりはない」を選択した未婚の男女は明らかに増加しているにもかかわらず、同研究所は「集計結果のポイント」として、「一生結婚するつもりはない」の増加には触れず、「いずれは結婚しようと考える未婚者の割合は、男性85.7%(前回86.3%)、女性89.3%(同89.4%)で、依然として高い水準にある」とのみ報告している。

 そして、新聞、テレビ、ラジオ、インターネットなどのさまざまなメディアにおいても、「生涯独身」を宣言する人の多さではなく、「男性の85.7%、女性の89.3%がいずれ結婚するつもり」に焦点が当てられた報道が多かった。

 実際には「生涯独身」を宣言する人が増えているのに、一方では、未婚の男女に対して「本心では結婚したいのだけれど、何かしらの理由があって結婚できない」という「かわいそうなイメージ」が醸成されているようにも思える。それは、こうした強調によっても「つくられている」側面があるのではないだろうか。

再婚が結婚に占める割合は、過去最高の約27%

 結婚する意思のない若者が増えたことに加えて、結婚自体にも大きな変化が見られる。17年1月に厚生労働省が発表した「婚姻に関する統計」によると、15年の結婚件数における初婚と再婚の割合は、初婚が73.2%、再婚は過去最高の26.8%となっている。1975年の時点では、初婚が87.3%、再婚が12.7%である。

 なお、再婚が初めて25%を超えたのは2005年のことだ。一般的に「結婚」といえば初婚を想像するだろうが、すでに10年以上も前から、現実には再婚が4分の1以上を占めている。離婚の増加が背景にあることは明白であり、一度結婚すれば「安心」という時代は終わりを迎えている。

 既婚者が「どうして結婚しないの?」と未婚者に問いかけるとき、そこには優越感が透けて見えることが多いように思う。しかし、その優越感を支える前提は「結婚したいのにできない」という未婚者への偏見、そして「結婚すれば安心」という結婚に対する思い込みでしかない。

 前述の通り、それぞれの事情はあるにせよ、「生涯独身」を選ぶ人は確実に増えており、結婚しても離婚→再婚というケースも増えているのが実態だ。

田中俊之/武蔵大学社会学部助教

田中俊之/武蔵大学社会学部助教

社会学博士 武蔵大学社会学部助教
1994年 都立武蔵高等学校卒業
1999年 武蔵大学人文学部社会学科卒業
2001年 武蔵大学大学院人文科学研究科社会学専攻博士前期課程修了
2004年 武蔵大学大学院人文科学研究科社会学専攻博士後期課程単位取得満期退学
2008年 博士(社会学)取得 武蔵大学大学院人文科学研究科社会学専攻甲第7号
学習院大学「身体表象文化学」プロジェクトPD研究員、武蔵大学・学習院大学・東京女子大学等非常勤講師を経て、2013年度より武蔵大学社会学部助教

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