スタンダードなデザインの服を高品質な素材で仕上げ、リーズナブルに提供しているファストファッション業界の王者「ユニクロ」。2020年8月31日現在、国内810店も展開し、日本のアパレル業界を語るうえで欠かせない存在となっている。
そんなユニクロ、コロナ禍で大きなダメージを受けているアパレルブランドが多いなかで、運営元ファーストリテイリングの発表した国内ユニクロ事業の売上推移速報によると、今夏はかなり好況だった模様。8月は既存店・Eコマースの売上高は前年同月比29.8%増、客数は同26.0%増、客単価は同3.0%増と、驚異的な増収を記録しているのである。記録的な猛暑となった今夏の需要に、エアリズム関連アイテムやオリジナルTシャツがマッチしたのだろう。
さて、ユニクロはベーシックデザインのアイテムが多いため、あまりファッションに明るくない人でも着こなしやすい服が多いが、実はユニクロのなかにも着こなしが難しく、着る人によってはダサくなりがちな服も存在している。そこで今回は「Business Journal 買うべき・買ってはいけない調査班」が、「この秋、買ってはいけないユニクロの服5選」をセレクト。そして、恋愛コラムニストで10年以上のファッションライター経験もある堺屋大地氏に、なぜおすすめできないかを解説してもらった。
今回、以下の3つを基準として選定した。
・ファッションビギナーが着るとダサくなる可能性が高いこと
・“最先端のおしゃれ”すぎて一般ウケしない場合があること
・無理に若ぶっているように見えるなどして女子ウケが悪いこと
江戸浮世絵 UTシリーズ(半袖・レギュラーフィット)/1500円(税別、以下同)
江戸後期に活躍した浮世絵師4名(葛飾北斎、歌川国芳、歌川広重、東洲斎写楽)の作品を、大胆にTシャツプリントに落とし込んだ江戸浮世絵Tシャツシリーズ。世界的に有名なボストン美術館に所蔵されている多色刷り木版画からのセレクトだという。
「買ってはいけない理由はシンプルにダサいからです。特にこういった和柄の服は、女性からのウケがとにかく悪い傾向にあります。胸ポケットだけに浮世絵が描かれているものはまだマシですが、前身頃に大きく浮世絵が描かれているTシャツを着こなせる人は、本当に少ないと思います。ただ、誤解しないでいただきたいのが、古典の芸術作品にケチをつけるつもりは毛頭なく、モチーフになっている浮世絵がダサいと言っているわけでもありません。浮世絵をTシャツにどーんとプリントしてしまう、そのユニクロのセンスに疑問があるということですね」(堺屋氏)
ビリー・アイリッシュ × 村上隆 UT グラフィックTシャツ(半袖・オーバーサイズフィット)/990円(値下げ後価格)
“ビリー・アイリッシュ × 村上隆”のコラボレートTシャツシリーズ。日本が誇るアーティスト村上隆が、今年のグラミー賞において史上最年少18歳で主要4部門を独占した、ビリー・アイリッシュをモチーフに手掛けたコレクションとなっている。
「胸元に『BILLIE EILISH』のロゴと独創的なフラワーアートが描かれたTシャツなどがあります。『買ってはいけない』に選出していることと矛盾してしまうかもしれませんが、センスの良いデザインになっていますね。ですから、ビリー・アイリッシュの楽曲が好きなファンで、彼女に一家言あるという人なら、このTシャツを買う資格があるし、オシャレに着こなせるでしょう。
では、どういう人が『買ってはいけない』のかというと、ビリー・アイリッシュにそれほど造詣が深いわけではないという方。見た目の問題ではなく、ミーハー心ではやっているから着てみたという“ノリ”が、ファッションを楽しむスタンスとしてダサいのでやめておいたほうがいいと思います」(同)
スウェットシャツ(長袖)/1990円
着心地抜群のふくらみ感があるコットン100%のフレンチテリー素材を採用したスウェットシャツで、ヴィンテージ感とトレンド感が融合している。カラーバリエーション(カラバリ)はライトグレー、グレー(2色)、ブラック、ピンク、ナチュラル、ベージュ、ダークブラウン、イエロー、グリーン、オリーブ、ネイビーの12色展開。
「丸首のシンプルなスウェットシャツなので、このアイテム自体がダサいということはありません。でも20歳前後の若者感が強いトップスなので、大人が着こなすのは難しいように感じます。ブラックやネイビーといった落ち着いた色味のものであれば30代・40代でも似合いやすいですが、ピンクやイエローは絶対に避けたほうがいいでしょう」(同)
コーデュロイワイドフィットスタンドカラーシャツ/2990円
洗いをかけて柔らかな着心地にしたコーデュロイシャツで、アーティスティックディレクターであるクリストフ・ルメールが率いるデザインチームが手掛けたトップス。素材はコットン100%で、ゆったりとしたボックスシルエットを採用している。カラバリはブラック、オレンジ、ナチュラル、ダークブラウンの4色展開。
「今秋のユニクロの『買うべき』5選のなかに、コーデュロイワークシャツを選出していますので、ユニクロのコーデュロイシャツが悪いというわけではありません。ではこちらを『買ってはいけない』に選出した理由は何かというと、スタンドカラーを採用していること。ファッション玄人でないと、スタンドカラータイプのシャツを着こなすのはけっこう難しいんです。ファッションに対して日々アンテナを張っていてセンスに自信のある方にはおすすめですが、センスに自信がない方は避けたほうがいいですね」(同)
ウルトラライトダウンジャケット/5990円
毎年爆売れしている、冬のユニクロアウターの代名詞的なウルトラライトダウンジャケット。エリがしっかり立ち上がってきれいに見えるように改良されているなど、今季仕様でブラッシュアップされているのがポイント。多少の雨雪ならはじく耐久撥水加工も備えている。カラバリはライトグレー、グレー、ブラック、オレンジ、ブラウン、ブルー、ネイビーの7色展開。
「個人的に、ウルトラライトダウンジャケット自体が極端にダサいとは思っていないですし、品質と値段から考えればかなり良コスパのアイテムであることは間違いないです。ではなぜ『買ってはいけない』かというと、街で見かける頻度があまりにも高かったこと、そして着ている人たちがファッションに無頓着っぽい中高年男性が多かったことが理由ですね。これでダサいイメージが定着してしまっているアウターなので、“ちょっとおしゃれ”を目指すのであれば、買わないほうがいいと思います」(同)
今回挙げた5選のなかには、その服自体がダサいわけではなく、年代的に着こなしが難しいアイテムであることや、そのアイテムのバックボーンを考慮すると、「買ってはいけない」という判断になるものが少なくなかった。ユニクロアイテムはスタンダードなデザインで着こなしやすいものが主流であるが、こういった落とし穴があるので注意していただきたい。
(文・取材=「買うべき・買ってはいけない調査班」 from A4studio)
※情報は2020年9月12日現在のものです。