日本でも市民権を得つつある、ブラジリアンワックスなどを用いた「体毛処理」。元AKB48の高橋みなみが、ラジオ番組のなかでブラジリアンワックスを使ったアンダーヘアの処理について語り、話題を呼んだこともある。
アンダーヘアの処理は、アメリカ人女性の実に6割超が「陰毛全体」を除毛している――。そんな統計結果もあるほどポピュラーだ。
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ところが、「陰毛を頻繁に処理する人」は、ヘルペスやヒトパピローマウイルス(HPV)、梅毒などの性感染症のリスクが3~4倍に上ることが、新たな研究で示された。
「処理の頻度が高い人や、陰毛を残らず除去している人ほどリスクが高かった」と、研究を率いた米テキサス大学泌尿器科外科助教授のチャールス・オスターバーグ氏は述べている。
この研究は「Sexually Transmitted Infections」(2016年12月5日オンライン版)に掲載されたが、陰毛処理と性感染症の因果関係は明らかにされていない。
<頻繁に処理をする人>ほど性行為の回数が多い
オスターバーグ氏によれば、「清潔さや美容の面で体毛に対する認識が変わってきたことにより、陰毛の手入れや除去は男女ともに世界的に広まりつつある」という。
今回の研究では、18~65歳の米国人7580人を対象に、陰毛処理の習慣、性行動、性感染症の既往について調査。すると、約4人に3人(74%)が陰毛を処理したことがあると回答。女性は男性よりも処理の経験がある人が多かった(女性84%、男性66%)。
陰毛を処理している人のうち、17%が「極度」に分類され、年に12回以上、陰毛を残らず除去。22%は「高頻度」に分類され、1~7日に1回、陰毛の手入れをしていた。10人に1人は両方の区分に入っていた。
その結果、極度の処理をしている人は性感染症になるリスクが4倍であり、高頻度の処理をしている人は3.5倍であることがわかった。
米インディアナ大学医学部教授のデニス・フォーテンベリー氏は、「処理によって皮膚に小さな傷ができるために、病原体が入りやすくなる」との考えを示している。一方、オスターバーグ氏は、頻繁に陰毛処理をする人ほど性行為の回数が多いため、性感染症リスクも高いのではないかと指摘している。
年齢や性交渉を調整しても、陰毛処理でリスクが80%高くなる
研究では、全体として陰毛処理をしている人は年齢が若く、性行動が活発であり、性交渉の相手の数が多い傾向がみられた。しかし、年齢や性交渉をした人数について調整してもなお、1度でも陰毛を処理したことがあると回答した人は、性感染症リスクが80%高かった。
また、定期的に陰毛処理をする利点として、毛ジラミのリスクが低減することもわかった。毛ジラミは陰毛の中で繁殖するため、処理をしない人はリスクが倍増すると研究著者らは報告している。
憂うべき日本の性感染症事情
ここまでは海の向こうの話題だが、性感染症に関して日本は憂うべき事態に陥っている。
国立感染症研究所は16年12月6日、11月27日までに報告された梅毒の患者数が4077人になったと発表。同研究所の報告では、10年以降、梅毒の報告数は増加傾向に転じている。
厚生労働省も16年、「梅毒の感染者数の増加傾向」に注意喚起を促している。14年の感染者数が過去10年で最高、10年前の3倍水準という由々しき事態が調査で判明したからだ。
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また、先進国のなかでは、ほぼ唯一といえるほど「HIV(エイズウイルス)」感染者の増加が続いている。厚労省は昨年、12月1日の「世界エイズデー」で人気アニメ「美少女戦士セーラームーン」を用いた性感染症の啓発を発表し、HIV無料検査を実施するなど、普及啓発イベントに取り組んでいるのだが、その成果はみえていない。
興味深いレポートとなった、今回のアンダーヘアの処理をめぐる性感染症のリスク報告。もちろん、陰毛処理の有無よりも、正しい予防知識と安全なセックスが性感染症を防ぐ大前提である。
(文=ヘルスプレス編集部)