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新見正則「医療の極論、常識、非常識」

誰しも死ぬ時に逃れられない「多額の費用」…より安く済ませるための生き方

文=新見正則/医学博士、医師
誰しも死ぬ時に逃れられない「多額の費用」…より安く済ませるための生き方の画像1「Thinkstock」より

 今回は、医療費削減予防医療について盛り上がっています。“極論君”の意見は「医療費を削減するには、病気にならないことが大切だから、しっかりと予防医療にお金を使うべきだ」という主張です。

 まず、“常識君”の解説です。

「医療は日々進化しています。そして日本の医療制度は世界でも素晴らしいもので、国民皆保険でフリーアクセスです。フリーアクセスとは、どこの保険医療機関にでも自由に診てもらえるということです。住んでいる場所や収入などによって保険医療機関が限定されることはないという意味です。国民皆保険とは、国民全員が基本的に医療保険に加入しているということです。

 そして最大でも3割負担で、1割負担とか、医療費は無料といった人もいます。その上で高額療養費制度があるので、年収にもよりますが、暦月当たりの支払いには上限があり、多くの方は15万円前後の負担額が上限です。1000万円の医療費が必要でも、300万円を負担するのではなく、15万円前後で収まるのです。残りのお金は税金や保険料として広く国民から徴収している財源で賄われます。そんな医療費が2015年度には41兆円を超えたのです。約20年前の1995年の医療費は約27兆円でした。約40年前の75年は6兆5000億円でした。このまま医療費をみんなのお金で負担し続けると医療費はもとより、国家財政が破綻するともいわれています」

 極論君が改めて持論を展開します。

「だからこそ、病気に罹らないことが大切で、予防医療にしっかりとお金を使えば、医療費の増加には歯止めがかかるのです」

逃れることはできない費用

 ここで“非常識君”が質問します。

「人間はいつかは死ぬのですから、いくら予防医療を行って病気を回避しても、死ぬときにはお金がかかるのではないですか。車を買って、10年乗って、そして転売するのであれば、その10年間に故障がないようにしっかりとメンテナンスをすることには意味があると思っています。少々のお金をかけても、何もメンテナンスをしないで重大な故障を招き、高額の修理費が必要になることを回避することは有益です。

 ところが人間は死ぬまで、自分のからだを使うのです。10年間で転売できる車とは違います。どんなにメンテナンスをしても、いつかは故障する頻度が高まるでしょう。そうであれば、廃車になるまでの費用は、やはり高額になるのではないですか。気持ちよく乗れる期間はメンテナンスによって延長できると思いますが、突然に廃車になるようなアクシデントでも起こらないかぎり、修理費用は同じように発生するように思えてなりません」

新見正則/医学博士・医師

新見正則/医学博士・医師

1959年生まれ
1985年 慶應義塾大学医学部卒業
1985年~ 慶應義塾大学医学部外科
1993~1998年 英国オックスフォード大学医学部博士課程
1998年~ 帝京大学医学部外科に勤務

 幅広い知識を持つ臨床医で、移植免疫学のサイエンティスト、そしてセカンドオピニオンのパイオニアで、モダン・カンポウやメディカルヨガの啓蒙者、趣味はトライアスロン。著書多数。なお、診察希望者は帝京大学医学部付属病院または公益財団法人愛世会愛誠病院で受診してください。大学病院は紹介状が必要です。

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