日本の飲食店の場合、店頭表示で選択すれば「喫煙」も「分煙」も可能である――。これが「お・も・て・な・し」の実態となるのか。
2020年東京五輪・パラリンピックを、世界保健機関(WHO)などが推進する「たばこのない五輪」として実現するための周知期間を鑑みた場合、対策強化を盛り込んだ健康増進法改正案の今国会における改正が必要であるといわれている。
その<指揮官>である塩崎恭久厚生労働相も「自ら説明」すべく臨んだ、自民党の厚労部会を前にこう宣言していた。
「歴史的な第一歩を踏み出せるような受動喫煙対策ができるようにしたい」
しかし、部会終了後の同相のコメントは大きくトーンダウンし、「まったく厚労省案のままでいくことはあり得ない」という“腰砕け”そのものの敗北感に満ちていた。
「歴史的一歩」を踏み外した厚労相
約90人が参加して行われた5月15日の同部会では、大臣自らが厚労省案(=小規模スナックやバー以外は原則禁煙)を説明した後、田村憲久政調会長代理(前・厚生労働大臣)が代替案を示した。
その内容は、「望まない受動喫煙を防止」「飲食店は一括りに扱う」「『喫煙可』『分煙』の表示義務を課す」「面積基準を設ける」の4点。
この妥協案は先立つ8日に、慎重派と規制派双方の幹部間で合意を得ていたもの。しかし、質疑ではいずれの案にも異論が噴出した。
「合意案(=妥協案)で一任いただきたかったが、ふりだしに戻った。今国会で提出することはかなり厳しい」(渡嘉敷奈緒美部会長)との有様でジ・エンド。
つまり「たばこのない五輪」実現に要する周知期間に割り込むことは必至。現状ではWHOの4段階評価で「最低レベル」に分類される日本の喫煙環境は、「歴史的な第一歩」を情けなくも踏み外してしまったのである。
この自民党部会は3カ月ぶりの再開だったからか、ゴールデンウィークの連休明けはとにかくタバコをめぐる話題が続出した。なかでも上記部会に先立って公表された、厚労省研究班による受動喫煙の推計医療費は「花火」と呼ぶにふさわしいインパクトを秘めていた。