EUとの貿易協定で、ワインの関税が5年後に撤廃されることになりました。「ホンモノのワイン」が増えて、「インチキなワイン」が淘汰されていけばいいのでしょうが、「悪貨が良貨を駆逐する」のが食品業界の常なので、心配になります。
インチキなワインではなく、白ワインからつくる果実酢の「白ワインビネガー」のなかにも、食卓から消えてほしいと思うものがあります。
食卓から消えてほしいこんな白ワインビネガー
エスビー食品の販売している白ワインビネガーの謳い文句は「高級ワインの産地で知られるフランス・ブルゴーニュ地方に本拠を置く『MAILLE(マイユ)』ブランドのビネガーです。今や世界のグルメから選ばれる本物のブランドをお届けします」というものです。
「本場フランスの白ワインビネガーがお手軽な価格で使える」と愛用している人もいると思います。しかし、この白ワインビネガーが、フランスで販売されている白ワインビネガーと同じものではないということを知っている人は少ないでしょう。
ヱスビー食品は、こう言っています。「製造がフランスなのは間違いありませんが、日本に私どもが輸入している白ワインビネガーと同じものがフランスで販売されているかはわかりません」(ヱスビー食品お客様相談室)。まさに「オイオイ、それはないんじゃないの」という感じです。
同商品の原材料表示には「白ワイン 酸化防止剤(亜硫酸塩)」と記載があります。酸化防止剤はワインに古くから使われていますが、ヒトの粘膜を刺激する恐れがあります。フランスブランドに惑わされず、無添加白ワインを発酵してつくる白ワインビネガーを選んだほうが安心です。
白ワインが使われていない白ワインビネガー
ワインビネガーは、ぶどう果汁にワイン酵母を加えてアルコール発酵させた後、酢酸菌を添加し、発酵させてつくった果実酢です。白ワインはブドウの皮は使わないので、白くなります。その白ワインからつくった酢が、白ワインビネガーです。
ところが、ミツカンの「白ワインビネガー」の原材料表示には、「白ワイン」の記載が見当たりません。それなのに、なぜ「白ワイン」の名が付いているのでしょうか。
ミツカンに問い合わせると、「ぶどう果汁はワインではありませんが、ぶどうの皮を使わない果汁です。これを発酵させますと白ワインになりますので、白ワインと名が付いています。ぶどう果汁の産地は日本とアルゼンチンです」(お客様相談室)との回答でした。
つまり、「国産」と「アルゼンチン産」を混合させたぶどう果汁を発酵させてつくっているわけですが、何か狐に騙されたような気分です。いずれにせよ、商品名から「白ワイン」の名称は外すべきでしょう。
同商品には、保存効果を高める物質も添加されています。原材料表示にある「アルコール」がその物質です。アルコールは、「エタノール」あるいは「酒精」とも表示される一般飲食物添加物です。アルコール代謝異常の方は、よく表示を確認する必要があります。
以上のことから、ワインビネガーを選ぶなら、原材料表示は「白ワイン」または「ぶどう果汁、ぶどう」とだけ記載してあるものが安心できます。
(文=郡司和夫/食品ジャーナリスト)