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小薮浩二郎「食品の闇」

世界的に使用禁止広まるトランス脂肪酸、日本で危険性の研究が進まない理由

文=小薮浩二郎/食品メーカー顧問
世界的に使用禁止広まるトランス脂肪酸、日本で危険性の研究が進まない理由の画像1「Gettyimages」より

 脂肪酸はエネルギーになるほか、細胞膜の重要な構成成分です。住宅にたとえると、細胞膜は柱に相当します。健全な細胞膜はシス型の脂肪酸で構成されています。ところがトランス脂肪酸を含む油脂を摂取すると、このトランス脂肪酸が細胞膜に取り込まれます。本来は使用してはいけないネジれた、曲がった角材を家の柱に使用するようなものです。これでは健全な家はできません。

 トランス脂肪酸の危険性については、さまざまなことが指摘されていますが、特に危険なのはトランス脂肪酸が悪玉コレステロールを増加させ、動脈硬化を促進し、その結果、心筋梗塞、脳梗塞などを引き起こす点です。命に危険がおよびます。この点は厚生労働省も認めています。

 前回お話ししたように、トランス脂肪酸にはさまざまな種類があり、それぞれ危険性は異なります。また、たとえばマーガリンを食べた場合、何種類ものトランス脂肪酸が口に入るわけですが、どのような危険性があるのかは完全には未解明です。

 トランス脂肪酸の有害性について、積極的には研究されません。その理由は以下のとおりです。

(1)お金にならない
(2)かなり難しい研究になる
(3)研究には相当な額のお金が必要
(4)合成油脂のメーカーには研究する道義的責任があるが絶対にやらない。
(5)公的研究機関は食品の有害性の研究には積極的でない
(6)大学はいまや産学協同で民間企業からの資金導入に必死なので、民間企業の嫌がることはやらない。このような研究をすると、学生の就職に悪影響を及ぼす

 以上のような理由で、トランス脂肪酸の有害性の解明は遅々として進まないのです。

さらなる危険性が懸念

 トランス脂肪酸は不飽和脂肪酸部分で生成されますが、不飽和脂肪酸は空気中の酸素と結合して有害な過酸化脂質に変化します。過酸化脂質は空気に触れるだけでも、ゆっくり生成されます。パン、クッキー、フライなどのように、加熱すると速く生成されますが、この事実は何十年も前からわかっていることです。

 過酸化脂質は下痢の原因になったり、腎臓、肝臓、肺などに障害を起こしたり、赤血球の膜を不安定にしたりし、発がん性も認められています。過酸化脂質については法令で若干の規制がかけられていますが、完全に守られているとはいえません。

 強く懸念されるのは、不飽和脂肪酸のうち炭素の二重結合が2つ以上あるもの、たとえばリノール酸やリノレン酸などを含む脂質についてです。リノレン酸の一部がトランス型に変化し一部が過酸化されたものです。

 トランス脂肪酸と過酸化脂質を摂取したら、どのような健康被害があるのかについては、十分な資金を投入して研究を進める必要があるのではないでしょうか。

 次回は、トランス脂肪酸の規制について考えてみたいと思います。
(文=小薮浩二郎/食品メーカー顧問)

小薮浩二郎/食品メーカー顧問

小薮浩二郎/食品メーカー顧問

1945年、岡山県生まれ。九州大大学院農芸化学専攻(栄養化学講座)修了。製薬会社の研究部門ほか、添加物開発の最前線で添加物研究に従事する。研究歴40年以上で、第一人者。現在は、食品会社の顧問、食品販売会社特別顧問(品質管理)に携わる。著書に「悲しき国産食品」「食品業界は今日も、やりたい放題」「食品選び・おとなの知恵 ちょっと高くても、コッチ!」など。

Twitter:@eQuqANeNct8MdU5

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