トランス脂肪酸、WHOが排除の方針発表…農水省は規制せず放置、幅広い食品で使用
今回も、本連載前回記事の続編のような内容です。油のなかでも“最悪”で、私たちがぜったいに摂ってはいけない「トランス脂肪酸」に関してです。
本連載を続けて読んでくださっている方は、「その話は以前読んだ」と思われるかもしれませんが、今回はまた別の角度からの話です。
トランス脂肪酸が私たちの健康に大きなダメージを与えるということは、もうすでに多くの方の知るところとなりました。ただ、その深刻さが伝わっていないと感じます。そのため、日本においてはいまだになんの規制もなく野放し状態で、製造側としてはやりたい放題になっています。
ただし筆者は、トランス脂肪酸を含んだ食品を、個人の責任において食べるのは自由だと考えています。どれだけ科学的な根拠があったとしても、「トランス脂肪酸は危険ではない」と主張する人たちは存在するからです。
農林水産省は、トランス脂肪酸に関して、このようなコメントを出しています。
「食品中のトランス脂肪酸含有量について上限値を設けたり、部分水素添加油脂の食品への使用を規制したりするなど、行政機関が規制措置を実施している国や地域は一部に限られています。食品からトランス脂肪酸を完全に排除している国や地域はなく、いずれの場合も、一定量以下であればトランス脂肪酸の食品中の含有を認めているのが現状です」
「トランス脂肪酸を多く含む食品を規制することは可能ですが、トランス脂肪酸の摂取量を実際に減らすには、食生活そのものの改善が重要と言えます」
「一部の国や地域では、食品中の飽和脂肪酸とトランス脂肪酸の含有量表示を義務づけていますが、ほとんどの国はトランス脂肪酸の低減を食品事業者の自主的な取組に委ねており、消費者に対してはバランスのよい食生活によって脂質をとりすぎないように注意喚起を行うことを重視しています。食品からの脂質の摂取量そのものを減らせば、同時に飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の摂取量も減らすことができるためです」
このコメントを読んで、どのような感想を持つかも自由です。筆者は、責任の所在を明確にせず、自分たちに累が及ばないように、あたりさわりのない書き方をしている、と受け止めます。
「一定量以下であればトランス脂肪酸の食品中の含有を認めているのが現状」
「トランス脂肪酸の摂取量を実際に減らすには、食生活そのものの改善が重要」
「食品からの脂質の摂取量そのものを減らせば、同時に飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の摂取量も減らすことができる」