やたらと揚げ物ばかり食べたい人は要注意?間違った油の摂り方で病気につながる恐れも
日本人は油まみれだが油不足
実は、日本人の油好きには明確な理由があります。
結論をいうと、日本人は「油不足」です。だから、体が油を欲求するのです。「日本人は油まみれだと言ったばかりではないか」と疑問を持たれる方がいると思います。しかし、油まみれの日本人ですが、実は油不足なのです。矛盾しているようですが、それは摂っている油と、体が欲求している油が違うのです。
現代日本人が日常的にとっている油は、「オメガ6脂肪酸」をたくさん含んでいるものです。逆に、通常の食生活の中で摂りにくいとされているのは「オメガ3脂肪酸」です。この2つの脂肪酸は「必須脂肪酸」と呼ばれているもので、私たちが生きていく上で欠くべからざる栄養素のひとつなのです。
したがって、このどちらかが足りなくなると、体は「油が足りていないから補給してほしい」というサインを出します。それは、「油を使った食べものが欲しい」という具体的な欲求につながります。ただ残念なのは、その時に体は、必要としている脂肪酸までは指定しないことです。
そのため、基本的な知識を持っていないと、自分がどの脂肪酸を欲しているかはわかりません。ここ数日、自分がどの脂肪酸を摂っていたか、または摂らずに過ごしたかがわからなければ、今、どの脂肪酸を摂るべきなのかはわかるはずがありません。「油が欲しい」という体の求めに対して、本当に必要な油ではなく、すでに足りている脂肪酸を摂り続けてしまうとどうなるでしょうか。
当然のことながら、体内での脂肪酸のバランスが崩れます。体調がすぐれない、疲れやすい、肌が荒れる、髪の毛が抜けやすいなどの全身症状があるはずです。しかし、それを見逃したり、「大したことはない」と高をくくっていると、やがて深刻な疾病へとつながりかねません。
体の中での油の働きは多岐にわたりますが、重要なのは60兆個もあるといわれる細胞一つひとつの細胞膜の原材料になることです。細胞膜は、オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸を中心として、そこにたんぱく質やコレステロールなどが加わってつくられています。したがって、オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸のどちらが欠けても、丈夫で健康的な細胞膜はつくることができないのです。
油のもうひとつ重要な働きは、エイコサノイドと呼ばれる、体内調整物質の原材料となることです。体が、さまざまな自然環境の変化に対応するためにつくり出すプロスタグランジン、ロイコトリエン、トロンボキサンなどの物質がエイコサノイドです。エイコサノイドには、炎症系と非炎症系があります。どちらも健康な体を維持するためには必要なのですが、油の摂り方によっては、炎症系のエイコサノイドが過多になってしまう場合があります。現代日本人は、ほとんどが炎症系エイコサノイド過多の状態で日常を送っています。それが、アレルギーの元になっていたり、生活習慣病を引き起こしていたりするわけです。
筆者は講演やクッキングセミナーなどで「亜麻仁油」を勧めますが、それは亜麻仁油がオメガ3脂肪酸を多く含んでいるからです。
また、油を高温に加熱すると「過酸化脂質」という、私たちの体にとって非常に毒性の強い物質がつくられるので、これを摂取してしまうこともとても危険です。
「今日の夕食はとんかつにするか、それとも鶏のから揚げでいくか、あるいは思い切って天ぷらもいいな」などとお考えの方は、ご自分が揚げ物メニューばかり思い浮かべてしまうのはなぜかを、考えてみたほうがいいかもしれません。
(文=南清貴/フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会代表理事)