今回は、博物館の常設展を紹介しよう。この連載では、これまでにいくつかの企画展を紹介してきた。しかし、もちろん常設展も楽しい展示が満載だ。
今回に限らず、折にふれて、日本各地の博物館を紹介していきたい。そんな“国内博物館探訪”の初回にあたるこの記事では、東京のビジネス街にある小さな博物館をレポートする。
東京都心に佇む魚化石のギャラリー
東京・麹町。皇居の西側に位置するビジネス街。新宿通りが東西に走り、地下では東京メトロ有楽町線と半蔵門線が南北にほぼ並行して走っている。ビジネスビルやマンションが並ぶ一角だ。行政区としては千代田区に属する。
今回紹介する博物館は、その有楽町線麹町駅が最寄り駅だ。新宿通り沿いの1番出口から地上に出て、その目の前を南北に伸びるプリンス通りを南下する。ラーメンファンにおなじみの「めん徳二代目つじ田麹町店」を左に見ながら南下を続け、最近何かと話題の多い文藝春秋本社ビルの前を左に折れて東に進む。そして、最初の角を右折して再び南下し、通りをひとつ抜けた先のT字路を左折。だいぶ人通りが少なくなったその場所は、マンションが並ぶ静かな一帯だ。
そこから先は1分もかからない。ほどなく、左手に今回の目的地が見えてくる。「城西大学水田記念博物館大石化石ギャラリー」である。
大きな看板が出ているわけでもなく、一見するとそこに博物館があるとは気づかないかもしれない。そこは城西大学紀尾井町キャンパス3号館の裏手に当たる場所で、建物に近づくと階段を上がった左手の奥に恐竜の全身骨格を見ることができるだろう。しかし、その全身骨格につられて奥へ進むと、目的の化石ギャラリーにはたどり着けない。実際、筆者は初回訪問時に全身骨格につられて奥へと進み、そのまま大学の建物内で道に迷ってしまった(そのとき博物館への道を教えてくれた学生さん、ありがとう)。
実は、道路にほど近い位置に博物館の入り口となる自動ドアがある。初見では黒い壁にしか見えない自動ドアだが、近づけばきちんと稼働して迎え入れてくれる。その先には、壁に地球の歴史が描かれ化石の写真も飾られている細い通路がある。一目見て、自分が「博物館に来た」と感じるだろう。その通路の先にあるギャラリーが、今回の目的地だ。
魚類化石の“常識”を覆す標本がズラリ
大石化石ギャラリーの中核をなすのは、ブラジル産の魚化石だ。時代は白亜紀前期、今からおよそ1億1300万年前頃とされる(ただし、白亜紀前期という時代はともかくとして、1億1300万年前という年代値については議論がある)。
「なんだ。恐竜じゃないのかよ」と思われることなかれ。この魚化石がすさまじい。
そもそも、魚化石は一般的にペシャンコの状態で発見される。陸上脊椎動物と異なり、魚には強靭な肋骨がない。そのため、化石になる過程で上に積もった地層の重みに耐えきれず、地層という板の上にプレスされた魚拓のようになって発見されることがほとんどだ。