新型コロナの陰で感染が増加中「RSウイルス感染症」…高齢者や乳幼児がいる家庭は要注意
新型コロナウイルスのニュース一色といった日々が続くが、その陰で「RSウイルス感染症」が全国で増加傾向にある。通常は、秋から冬が流行期だが、今シーズンは3月後半から増加傾向にあり、新生活が始まり人の移動が増えるにつれて、さらなる感染拡大が懸念される。
RSウイルス感染症とは、主に乳幼児が感染しやすく、2歳までにはほとんどすべての乳幼児が感染する。一度感染した後も、繰り返し感染する。その症状は、一般に鼻水、発熱といった風邪症状であり、子供、大人ともに軽症だが、新生児や6カ月未満の乳児や早産児、心臓や肺に慢性疾患がある乳児は、喘鳴(呼吸がゼイゼイ、ヒューヒューと音が鳴る)や、肺炎などが重症化することもあり、注意が必要である。
RSウイルスに感染してもすぐには発症せず、その潜伏期間4~6日である。感染経路は、咳やくしゃみ、近距離での会話の際の飛沫感染と、ウイルスが付着した手指やドアノブやスイッチなどによる接触感染である。発症してから2週間程度はウイルスを排出するため、人に感染させないための予防も必要である。
診断と治療
1歳未満の乳児は、鼻に綿棒を挿入して鼻の中の組織を採取し、検査キットにより迅速に診断することができ、検査は保険適応となる。
しかし、1歳以上はRSウイルスに感染しても症状は風邪と同様のため検査は不要といわれており、検査を希望しても保険は適応とならない。したがって自費で行う必要があり、その料金は2000~5000円が一般的である。
また、治療には特効薬はなく、それぞれの症状を治療する「対症療法」を行い、回復を待つ。多くは1週間程度で回復するが、重症化すると入院治療が必要となることもある。
大人は軽症で済むRSウイルスだが、高齢者では注意が必要だ。特に喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)、心不全などの基礎疾患がある高齢者は重症化しやすい傾向にあり、2014年には茨城県の介護施設でRSウイルスの集団感染が起き2人の高齢者が死亡している。
新型コロナウイルスばかりが注目され、RSウイルスの感染増加への対策が遅れてしまうことがないように、乳児、高齢者がいる家庭では、新型コロナウイルスと合わせてRSウイルスの感染予防のためにも、引き続き手洗いやうがい、マスク着用、咳エチケット、消毒(トイレ、ドアノブ、手すりなど)などの感染予防対策を徹底してほしい。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)