暑くなると、居酒屋に寄ってビールを1杯飲みたくなります。そんなとき、ビールと一緒に何を注文しますか。
「お通し」といって小皿が出てくるお店が多いのですが、残念ながら、お通しは工場でつくられてパックされた食品を、事前に小分けして出てくることが多いのが実情です。
せっかくおいしいビールと、おいしい料理を食べに来ているのに、どこでも食べられる“工場製品”だとがっかりしてしまいます。
「まずは枝豆」と注文して、すぐに出てくる枝豆は、海外でゆでて凍結されたものを、店舗で解凍しただけの場合があります。ひどい店は、まだ凍ったまま出てきたりします。
枝豆は、朝採ったものを食べる直前にゆでるのが、もっともおいしいのです。つまり、ゆでる時間を考えると、ビールと一緒には出てこないのが普通です。もちろん、焼き魚、天ぷらなども、つくり置きでなければ、すぐには出てきません。家庭で調理したくない料理、もしくは調理が難しい料理、家庭ではできない焼き方の料理、などを食べられるのが外食の醍醐味だと思います。
一匹まるごと焼いた大きな魚や、注文してから揚げてくれる天ぷらこそ、居酒屋メニューではないでしょうか。
毎日きれいに清掃された店内で、雑味のない生ビールとともに、居酒屋の決め手となるメニューは、「冷や奴」でしょう。
ただ豆腐を切って、ネギと鰹節を載せて、生姜を絞るだけなら、その日に入ったばかりのアルバイトでもつくれます。安い物ほど手を抜いて、そんなまがい物を多く出します。
豆腐がおいしいかどうかは、大きな差になります。
豆乳を固めるのに、にがりではなくグルコノデルタラクトン(GDL)を使用し、水を多く含んだ豆腐は、おいしくありません。
スーパーマーケットなどで豆腐を購入するときには、添加物表示や栄養成分表示を確認し、タンパク質量の多い豆腐を購入すれば、“まあまあ”の物を食べることができますが、外食では添加物表示や栄養成分表示がないため、自分の舌で判断するしかありません。
冷や奴が提供される温度も大切です。豆腐は、豆乳をにがりで固めた時が一番おいしいのです。温かい豆腐のままだと細菌が繁殖しやすいため、すぐに冷たい水で10度以下に冷やします。市販の豆腐のなかには、パック詰めした後に再加熱して殺菌している商品もあります。充填豆腐以外の木綿豆腐や絹豆腐で、賞味期限がほかの豆腐と比較して長い商品は、包装後再加熱している可能性があります。再加熱すると、豆腐の風味がなくなってしまいます。
冷や奴をおいしい豆腐で提供するか、安くて日持ちする豆腐を提供するかによって、お店の考え方がわかります。厨房で豆乳から豆腐をつくり、ほんのり温かい冷や奴を出してくれる居酒屋があれば、毎日通いつめたくなりませんか。
(文=河岸宏和/食品安全教育研究所代表)