熱中症で死なないために「やるべき対策リスト」…危険な症状と応急処置方法
7月の3連休は東北から九州にかけて高気圧に覆われ、全国で35℃以上の猛暑日になる地域が続出した。
7月15日には京都府の福知山市での38.8℃という最高温度にびっくりさせられたのもつかの間、16日には岐阜県は揖斐川町で39.3℃、多治見市で39.0℃、岐阜市で39.0℃、美濃市で38.8℃、郡上市で38.8℃、群馬県伊勢崎市で38.8℃が観測されるなど、全国927観測点のうち646地点で真夏日(30℃以上)、そのうち186地点で猛暑日(35.0℃以上)を記録した。まさに「灼熱地獄」日本列島となった。
その結果、まず全国で熱中症によって救急搬送された方、亡くなった方は以下のようになった。
28℃の室内で熱中症にかかる人がいるなど、暑熱に弱くなった原因はずばり「エアコン」にある。
エアコンがなかった50年くらい前までの日本では、炎天下で労働をしたり、運動をすることによる「日射病」は存在していたが、「熱中症」は存在しなかった。暑さによって体表に大量に出てくる汗が蒸発するとき、気化熱が体の熱を奪い取り、体を冷やしてくれていたからだ。
家庭の室内、オフィスや学校のなか、バスや電車のなかで活躍してくれるエアコンは、我々に快適な夏を提供してくれる半面、発汗の機会を奪い、その能力を低下させて、結果として熱中症の多発を招いたといってよいだろう。
よって日中エアコンのなかで過ごしがちの人は、シャワーですませず湯船につかる入浴をする、温泉施設に行きサウナに入る、運動をするなど発汗することを心掛けるべきである。
なお甲状腺機能低下症(粘液水腫、橋本病)、自己免疫疾患の強皮症やシェーグレン症候群、アトピー性皮膚炎などの病気では、汗腺が委縮して汗が出にくいので、熱中症を起こしやすい傾向があるので要注意だ。
また高血圧、心臓病、腎臓病、むくみなどで利尿剤を服用している方は、恒常的に体内に水分不足の状態が存在し、やはり発汗量が少なくなり熱中症にかかりやすくなる。
糖尿病の人はもともと三大合併症のひとつ、神経障害により発汗機能が低下する傾向があるし、そのうえ血液中の糖分と水分を尿中に捨てる糖尿病治療薬(SQLT2阻害薬)を服用している方は、さらに熱中症に対する十分な対策が必要となる。
予防法として一般的に言われていることは、以下である。
(1)のどの渇きを感じる前に、スポーツドリンクや1リットル(コップ5~8杯)当たり1~2グラムの食塩を溶かした水をちびりちびり飲む
(2)野外での運動や労働では、30分ごとに10分の休息をとる
ただし、「めまい」「頭痛」「吐き気」「手足のしびれ」「筋肉の硬直」などの熱中症の症状が発現した場合、すぐに救急車を呼ぶか、近医に搬送する必要がある。それまでの応急処置として、以下などが必要である。
(1)日陰や冷房の効いた部屋に移す
(2)体熱を逃がすため、衣服(襟やベルト)を緩める
(3)大きな動脈が走っている首や太ももの付け根、脇の下を氷や水に濡らしたタオルなどで冷やす
(4)うちわや扇風機などで、上半身(特に首から上)を冷やす
(文=石原結實/イシハラクリニック院長、医学博士)