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吉澤恵理「薬剤師の視点で社会を斬る」

地震への備えは十分?防災セットに加えるべき医薬品リスト…常用薬は何日分必要?

文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
地震への備えは十分?防災セットに加えるべき医薬品リスト…常用薬は何日分必要?の画像1
「Getty Images」より

 10月7日午後10時41分頃、東京都を中心とする関東地域で携帯電話の「緊急地震速報」が一斉に鳴り響いた次の瞬間、最大震度5強を観測する地震が発生した。今後、数日から1週間程度は余震が続く可能性があるが、さらに大きな地震が起きるのではないかという不安を感じる人も多いだろう。地震が起きないことを願うばかりだが、万が一に備え、防災セットを備えておくべきだろう。また、コロナ禍にあって防災セットには、医薬品も加えることをお勧めしたい。

常用薬は1~2週間分

 一般的に常用薬については、「少なくとも3日分を準備するとよい」という情報をよく見かけるが、過去の震災等を振り返ると薬の供給が滞った事例もあるため、1~2週間分は準備しておくと安心だろう。また、避難などに伴い普段と異なる医療機関を受診する際には「お薬手帳」が重要な情報となるため、お薬手帳を持つことをお勧めしたい。また、ライフラインが影響を受けるような大きな地震に備え、怪我や体調不良時に有用な救急箱を準備することが必須といえる。

【災害緊急時に起こりやすい怪我に備えたい薬】

・消毒薬(除菌、感染防止)

 ジェルタイプのアルコール消毒などが手の消毒などに有用である。災害時の混乱による環境悪化やソーシャルディスタンを保つことが難しくなり、新型コロナウイルス感染症やその他のウイルス感染などが蔓延する可能性もあり、拡大予防に消毒薬が不可欠である。

・ガーゼ、包帯(止血)

 災害時には割れたガラスなどで怪我を負い出血することも予想される。出血した際には、患部にカーゼを当て包帯などを巻き圧迫し止血することができる。また、ハンカチやタオルなども利用できる。

・キズパワーパッド(切り傷、擦り傷)

 切り傷は、水道水でしっかりと洗い流したあと、キズパワーパッドを傷口に貼る。湿潤療法と呼ばれ、傷を乾かさないようにする治療法であり、消毒薬の使用は厳禁だ。キズを消毒したり乾かしたりすると、キズを治す細胞まで死滅させてしまうので治りが遅くなる。災害時には断水も予想されるので、応急手当用に精製水などを救急箱に用意しておくといいだろう。

・湿布薬(打撲、捻挫など)

 冷感タイプの湿布薬が打撲や捻挫の痛みには効果的である。また、患部を心臓よりも高くして安静にすることで血行を抑制し、炎症の広がりを押さえることができる。

・三角巾(骨折)

 骨折が疑われる場合は、速やかな医療機関への受診が望ましいが、災害時の混乱ですぐに受診できないときは三角巾や包帯で患部を固定し、安静にしてほしい。固定には新聞紙を重ねて強度を増したものや、段ボールなどを重ねたものを添え木にすることができる。

・ステロイド成分配合軟膏(皮膚炎、虫刺され)

 災害時にはストレスから蕁麻疹や皮膚炎を発症することもある。また、避難時に虫刺されや汗疹などがあれば、早めの手当で悪化を防いでほしい。市販薬にもステロイド成分配合の軟膏やクリームがあるので、常備可能である。

・目薬(目の保護)

 災害時には異物が目に入ってしまうなども予想される。ただし、目薬は家族といえども眼病や感染症の予防のため共用することは避ける必要がある。したがって、家族の人数分の目薬を準備しておきたい。

災害緊急時に起こりやすい体調不良に備えたい薬】

・胃腸薬(腹痛、胃痛)

 災害時には不安やストレスから胃痛や腹痛、吐き気や下痢など、さまざまな胃腸障害が起こることがある。そんな胃腸障害に効果がある、複数の成分が配合されているような胃腸薬を常備するとよいだろう。また、胃腸の痛みが強い時には、市販薬にもあるブスコバンが効果的だ。下痢は無理に止めないことが望ましく、下痢止めよりも整腸剤を常備するといいだろう。

・解熱鎮痛剤(体の痛み、頭痛、発熱)

 怪我や火傷の痛み、頭痛、発熱にはロキソニンやイブプロフェン、アセトアミノフェンがよいだろう。医療用医薬品としても汎用されるアセトアミノフェンは、空腹時の服用でも胃に負担がかかりにくく、小児から大人まで服用することができるので、常備薬に入れておきたい薬のひとつである。

・総合感冒薬(風邪)

 災害時の混乱や避難生活では、ストレスや環境の悪化から免疫が落ち風邪などもひきやすくなる可能性がある。本来であれば、症状の一つひとつを治療する薬を服用することが望ましいが、災害時には「総合感冒薬」といって風邪の諸症状に効果がある成分を複数含む配合薬が活躍するだろう。お子様がいるご家庭では、小児用と大人用の2つを常備しておきたい。

・抗アレルギー薬(蕁麻疹、鼻炎、鼻水)

 ストレスや不安から蕁麻疹を発症する人も少なくない。医療用医薬品と同成成分を含む抗アレルギー薬も市販薬にあり、ポララミン、アレグラ、アレジオンなどがオススメである。

・口腔ケア医薬品

 断水などで歯磨きができないと、虫歯や口腔病を招きやすくなる。薬用のデンタルリンスやうがい薬を利用するだけでも口腔環境を改善できる。

【その他、救急箱に入れたいもの】

 体温計、ハサミ、つめ切り、ピンセット、マスクは必需品である。マスクは、使い捨てとフィルターなどが入った、繰り返し使用できるものがあると、より安心だろう。

 災害時を想定するとあれもこれも入れたくなるが、有用なものを必要最低限に揃えることが大切である。災害時には慌てず、身の回りの安全確保を最優先にし、家族や自身の健康チェックを毎日行ってほしい。災害を乗り切るには普段から防災意識を持つことが大切であり、災害時に備え、怪我の応急処置の方法などを学んでおくことも有益だろう。

 今回の記事を参考に、家族構成を考慮しながら必要なものを揃えてオリジナルの救急箱を備えてはいかがだろうか。

(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。福島県立医科大学薬理学講座助手、福島県公立岩瀬病院薬剤部、医療法人寿会で病院勤務後、現在は薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。

吉澤恵理公式ブログ

Instagram:@medical_journalist_erie

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