女性よりも男性の数が多く、男女比率の不均衡が深刻な問題となっている中国。このたび、そんな中国の識者の口から、驚くべき主張が語られた。それは、将来的に中国で結婚適齢期の男性が増加するにつれ、セックスロボットの普及・使用が一般化していくというものだ。
2月上旬、台湾中央通信社の取材に応えた社会学者の李銀河氏は、「2050年には、ロボットとの性行為が人類全体の性行為の半分を占めることになるだろう。(中略)これは非常に興味深い話である」と主張した。
李氏は、まず中国においては2050年頃になると、結婚適齢期の男性のうち3000万〜4000万人が人口構造上、“永遠”に人生の伴侶や結婚相手を見つけられなくなると強調。そのため、セックスロボットや仮想現実(VR)を使った性行為は、社会的に“白い目”で見られることがなくなると予想している。
つまり、男性が女性と結婚したくとも社会的・物理的に不可能になるため、性欲や愛の代替行為の相手をロボットにしたとしても、誰もとがめなくなるという指摘である。また李氏は、仮想的な性行為などは人工知能時代の新しい発明であり、エイズなど危険な病気の蔓延を防いでくれるという意味では、非常に安全なものとも付け加えている。
人工知能搭載のセックスドールも
中国では、跡継ぎとなる男児を女児よりも尊重する伝統や、1980〜1990年代に強力に推進された「一人っ子政策」の“負の遺産”などの複合的な要因で、男女比の不均衡問題が他国に比べて深刻である。2020年の段階で35〜59歳の独身男性の数は約1500万人との予想だが、それが2050年には3000万人にまで急増すると予想されている。なお、2018年時点では中国の総人口は13億9538万人。その内訳は男性7億1351万人、女性6億8187万人だ。つまり女性100人当たりの男性の数は、104.64となる。
人口推移に詳しい前出の李氏は、それら統計データや、現在、中国でもセックスドールが販売開始されている現実を踏まえ、数十年後には一般の人々も家電製品を購入するように簡単にセックスロボットを手に入れられるようになるだろうと予想している。実際中国では、広東省に工場を構える大手セックスドールメーカー・金三娃娃が2016年に人工知能(AI)を搭載した商品を発売。似たような製品も少しずつ増えており、李氏によれば、それらは“未来の兆候”なのだという。ちなみに同社製品の価格は1万〜5万元(約16万~82万円)となっており、ウェブサイトで見る限り、非常にクオリティが高い。
政府の保守的な政策も影響してか、中国国内のアダルトグッズ市場はまだそれほど規模は大きくない。しかし一方で、その成長速度は非常に速いという分析もある。中国のEC大手・京東(JD.com)は、2020年に中国国内のアダルトグッズ市場規模が90億ドル(約9870億円)に達するとも予想しているのだ。
李氏は、「多くの国では、住んでいる人々の半分以上が結婚していない。将来的に結婚が完全になくなることはないだろうが、その形態はさまざまな形に変化していくだろう」とし、ロボットと人間が性的関係を持つのが一般的になるのは、何も中国だけではないと指摘する。とはいえ、セックスロボットには魂や感情はなく、肉体的にも精神的にもコミュニケーションを取ることができる人間同士の恋愛を完全に代替することはないだろうとも話す。いくらセックスロボットや仮想性交が発達したとしても、人間同士で「本当の恋愛をしたほうがよい」というのが、李氏の立場である。
なお中国は人工知能の開発で米国と覇を競い合っており、政府・民間ともに同分野への投資熱がとても高い。今後は、機械的に合成された“知能”を持ったセックスドールの開発でも、世界を牽引していくのだろうか。いたってまじめな口調でメディア取材に応える李氏の様子を見ていると、それもまんざらあり得ない話ではないように思えてくる。
(文=河 鐘基/ロボティア編集部)