新しい元号が「令和」と発表されました。とても格式を感じる素晴らしい元号だと思います。インターネットでざっと見ただけでも、海外の主要紙、アメリカのウォール・ストリート・ジャーナル紙や、英国のガーディアン紙にもトップニュースとして取り上げられています。国の君主が変わるに伴い、年号が変わってしまうということも、海外では興味深く感じられているのではないでしょうか。
そんななか、各社ともに「令和」の意味を訳すのに苦労しているようです。日本語は、ひとつの漢字に多くの意味が含まれているだけでなく、8世紀に編纂された『万葉集』から引用された元号名なので、我々日本人でも正確に意味を説明するのは難しいので、外国語にするのは極めて困難でしょう。
ちなみに、英国国営放送BBCでは、単純明快に“order and harmony”と訳しています。その意味は「秩序と調和」ですが、日本のインターネット上でも、この翻訳は「わかりやすい」「かっこいい」と話題になっているようです。
この“Order”(秩序)という言葉ですが、とても英国的な言葉だと思います。今現在、英国議会はEU離脱協議で大荒れですが、日本の国会と同じくヤジが飛び交います。そんななかで議長が諫める言葉が「Order (秩序を)!」です。日本の国会では、「静粛に!」ですが、かなり意味合いが違います。日本の場合は、議員の気持ちの高ぶりなどお構いなしに、とにかくは「静粛に」なので、なかなかヤジが収まりません。
テリーザ・メイ首相の演説中にヤジが起こり、議長が「彼女に尊敬を持って」と言っても、まったく収拾がつかないにもかかわらず「秩序を! 秩序を!」と叫ぶと、なぜかそれで議員たちは収まってしまうのです。
ほとんどの国会議員は名家の生まれです。11歳くらいから全寮制のエリート中高に入学し、勉学だけでなく紳士淑女になるための作法も、四六時中仕込まれるわけです。そんな全寮制学校の生活は、映画『ハリー・ポッター』(ワーナー・ブラザース映画)を思い浮かべてもらえればよくわかると思います。
『ハリー・ポッター』の場合は魔術を教える学校ですが、それ以外は英国全寮制学校の風景をよく再現しています。ちなみに、この物語は「マグル(非魔法族)との混血を避けるために、魔法族が隠れて生きることは秩序を守るために必要なこととされている」という背景の上にストーリーが展開されますが、ここでも“秩序”という言葉が重要性を持って使われています。日本ならば“純潔を守る”という表現は使っても、“秩序”という言葉の出番はないのではと思います。
話がずれてしまいましたが、ふざけ盛りの生徒を、教師や寮長は「秩序を!」の一言で黙らせてきたわけです。そんな生徒たちが大人になり、地位と名声を得、国会議員になっても、「秩序!」という一言で、みんな自動的に黙ってしまうのかもしれません。
そんな英国議会で、現在紛糾中の下院議会のバーコウ議長は、とてもユニークな諫め方をします。「今日も、明日も、いつであっても、(ヤジは)意味がない。そして、そもそもあなたのヤジはへたくそ」と、英国人的皮肉を込めたユーモアを交えて、議会を進めていくのです。