昨年、タレントの和田アキ子が「眼瞼下垂症(がんけんかすいしょう)」の手術をしたことが話題になった。術後の和田の表情は、若返ったような表情でハツラツとして見える。今年になりワイドショーの司会などで活躍するフリーアナウンサーの宮根誠司も眼瞼下垂症の手術を受け、腫れが残る状態で番組に登場したことから視聴者の間で大きな話題となった。
加齢に伴い瞼(まぶた)が下がると「老けた印象」を与える。一昔前なら「老化」と片付けられたところだが、ミドル世代のみならずシニア世代となっても活躍する人が増えた「人生100年時代」となった今、たるんだ瞼は治療すべきといった認識が広く持たれるようになっている。
眼瞼下垂症とは、正面を向いた時に目を開けていても瞼が下がり、瞳全体が見えていない状態を指す。瞼を上げる役割をする筋肉が、加齢などの原因でたるみ、瞼を開けにくくなるのが特徴的な症状である。瞼がたるむ症状が進むと、視界も遮られるほどになる。瞼が下がってくると無意識に瞼を上げるようにしたり、視界を広く取ろうと顎を上げるようにするため、肩凝りや頭痛を招くばかりか、額のシワの原因となる。眼瞼下垂症には先天性と後天性があり、加齢によるものの多くは、後天性眼瞼下垂症にあてはまる。和田や宮根は、おそらく加齢による後天性眼瞼下垂症だったと思われる。
老化に伴う症状は後天性眼瞼下垂症であり、多くの場合は手術により改善することができる。眼瞼下垂症の手術は、瞼のたるんだ皮膚や筋肉を切除し、瞼を元に戻す。言うなれば、たるみを取りながら二重の整形手術をするのと同じである。眼瞼下垂症の手術は、術後の顔の印象を大きく変える。和田や宮根も術後の印象は若々しく変わっている。そのため、術後に精神的にも前向きになる人が多い。同時に眼瞼下垂症に伴う肩こりや頭痛の症状も解消され、心身ともに健康になるといっても過言ではないだろう。
眼瞼下垂症で受診すべきは、まずは眼科である。しかし、これまで眼瞼下垂症で手術した患者に接して感じたのは、手術を受ける前には、眼科医と形成外科医の両者に相談すべきということである。術後の二重の仕上がりに関しては、眼科医と形成外科医で大きな見解の差があるように思う。眼瞼下垂症の手術をした患者のなかには「術後の目が左右で大きく異なる」「瞼がひきつる」「目がしっかりと閉じられない」といった不具合を訴えるケースもある。術前に医師とのしっかりとしたコミュニケーションは不可欠である。
一般的には眼瞼下垂治療費用は保険適用となり、保険の各負担割合により多少の差はあるが、その窓口負担は両目で5万円程度である。しかし、形成外科医による手術の場合は自由診療による自費負担となり、10万円以上かかる医療機関が多いだろう。
芸能人が行ったことで眼瞼下垂症の治療が今後、一般に広がる可能性もあると思うが、医師選びは慎重に行ってほしい。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)