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片田珠美「精神科女医のたわごと」

妊娠の華原朋美さん、周囲のサポートと精神的安定が不可欠な理由…精神科医が解説

文=片田珠美/精神科医
妊娠の華原朋美さん、周囲のサポートと精神的安定が不可欠な理由…精神科医が解説の画像1華原朋美

 歌手の華原朋美さんが、妊娠6カ月で8月に出産予定であることを所属事務所や公式サイトを通じて発表した。実におめでたい話であり、無事に元気な赤ちゃんを産んでほしいと心から願う。

 ただ、精神科医としての長年の臨床経験から、次の2つの点について危惧せずにはいられないので、老婆心ながら申し上げておきたい。

(1)睡眠薬の影響
(2)産後うつ

 まず、華原さんは、交際していた音楽プロデューサーと破局した後、精神的に不安定になり、精神安定剤や睡眠薬を服用し始め、2007年には仕事のドタキャンなどが続いたせいで所属事務所から契約解除を通告された。その後、薬物依存症の治療のために家族が華原さんを精神科病院の閉鎖病棟に入院させたようで、そのことは華原さん自身がテレビ番組やインタビューなどで告白している。

 入院治療の甲斐あって、2012年に芸能界に復帰したが、2016年には精神的バランスを崩して、睡眠薬の大量摂取に手を出す寸前の状態だったと報じられた。したがって、精神的に不安定になりやすく、薬に頼りがちな傾向があるように見受けられる。

 さすがに妊娠が判明してからは、薬の服用をやめていただろうが、なかには「まさか妊娠しているとは思わなかったから薬を飲んでしまった」と訴える妊婦もいる。あるいは、妊娠中に不安になったり、イライラしたり、眠れなかったりして、どうしても薬に頼らざるを得ない場合もあるだろう。

 とくに睡眠薬は、急に服用を中止すると、睡眠薬を使用する以前よりも強い不眠が出現することがあり、「反跳性不眠( rebound insomnia )」と呼ばれる。そのため、睡眠薬を中止する際は、服用量を徐々に減らしていく漸減法、もしくは服用間隔を開けていく隔日法を用いる。

 こうした方法によって、妊娠中の睡眠薬使用を中止することができればいいのだが、もしできない場合は、薬の成分が胎児に届き、場合によっては奇形を引き起こす危険性(催奇形性)を考慮しなければならない。

 もっとも、たとえ妊娠と気づかずに服用してしまったとしても、あるいは妊娠中にどうしても薬に頼らざるを得なかったとしても、赤ちゃんへの影響がない場合が圧倒的に多い。万一赤ちゃんに何らかの異常があったとしても、その原因は不明の場合がほとんどであり、薬のせいとは言い切れない。だから、あまり神経質になりすぎず、どうしても必要な場合は、主治医と相談して薬を服用してもいいと思う。

片田珠美/精神科医

片田珠美/精神科医

広島県生まれ。精神科医。大阪大学医学部卒業。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。人間・環境学博士(京都大学)。フランス政府給費留学生としてパリ第8大学精神分析学部でラカン派の精神分析を学ぶ。DEA(専門研究課程修了証書)取得。パリ第8大学博士課程中退。京都大学非常勤講師(2003年度~2016年度)。精神科医として臨床に携わり、臨床経験にもとづいて、犯罪心理や心の病の構造を分析。社会問題にも目を向け、社会の根底に潜む構造的な問題を精神分析学的視点から分析。

Twitter:@tamamineko

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