「一億円で居酒屋建ててみた。」というインパクトの強いキャッチコピーで話題の居酒屋「億万鳥者 新宿本殿」。今年6月に東京都新宿区でオープンした同店は、本当に1億円をかけて開店まで至ったらしく、金色を基調とした高級感のある和風の内装とSNS映えする美味しそうな料理が特徴となっている。しかも、お客は本当に億万長者であるかのような扱いをされるらしく、来店するだけでお金持ち気分を体験できるというのだ。
SNSでは来店した人の感想も投稿されており、店名どおり「億万長者気分が味わえる」との声も。ほかにも「スタッフさんが楽しそうで元気貰える」「エンタメのまちである新宿らしくて面白い」などの声も見受けられ、多くの人が満足しているようである。
ただ、全面金ピカというのは成金趣味だと感じる人や、本当のお金持ち気分なんて味わえないだろうと訝しむ人もいるのではないだろうか。そこで今回は筆者が実際に「億万鳥者」を一般客として体験。おすすめの料理や自慢の接客を楽しみ、どのような居酒屋なのか、ネット上の声のどおり本当に満足度は高いのか、忖度なしでレビューしていきたい。
繁華街にある1億円の「本殿」の中へ
店舗はJR新宿駅東口からすぐ近くの繁華街にある。駅から徒歩で約2分の場所にある繁華街の中心にあるため、アクセスは良好といえるだろう。
入店すると、伝統的な組子細工と金の装飾で囲まれた入口に仰天。店舗が入っているのはいたって普通の雑居ビルだったが、一歩踏み入れると一気にきらきらした和の世界に突入した。そして、元気良く席まで案内してくれた店員は巫女姿。制服が巫女服なのは、「新宿本殿」という名の通り神社の要素を取り入れているからだろう。
筆者が到着したのは19時30分頃であり、店内はほぼ満席。予約していなかったので不安だったが、カウンター席が空いていたのでスムーズに入店できた。個室を使いたい場合は事前に予約をしておく方が安心だろう。
案内されたカウンター席はガラス越しにキッチンが見える小さなスペース。だがカウンター席といえど、引き戸付きとなっているため、通路と席を遮ることができて周囲の話し声が気になることはなかった。
注文は席の前にあるQRコードをスマホで読みこんで頼む方式。看板メニューである鳥料理をはじめ、キャッチーなネーミングのドリンクやサイドメニューが多数揃えられている。
SNS映えを追求した派手な料理の数々
まず到着したのは「億万鳥者レモンサワー」(580円 税込、以下同)。「金運上昇」「ちょっと高級」と謳われているお酒であり、確かに少し金持ちになれたような気分に。ちなみに飲んでみたところシロップの甘さが強かったので、ジュースを飲んでいるようだった。
その後、店員が木箱を持って登場。「お写真の準備いいですか~?」と元気に声を出して箱を開けると、中からなんと大量の最中が姿を現した。これは「年貢」(380円)という名前のお通しであり、居酒屋らしくないパステルな色合いとなっている。味はコンビーフとラズベリー、抹茶とあんこ、レモンとチーズの3種類があるという。
お皿(升)にコンビーフとラズベリーの最中を盛ってもらった。肝心のお味はというと、ラズベリーの酸味とコンビーフの塩気が意外にもマッチしていて美味だった。
次に「久保野経理の病みつききゅうり」(480円)が届いた。金色の煌びやかなお皿に30cmほど並んだきゅうりが並んでいる本品。実食してみると、かなり薄切りであるにもかかわらずシャキシャキと歯ごたえがあり、病みつきになる味わい。あっさりとしているので、どんどん箸が進んでしまった。なお「久保野経理」というネーミングからは、店内スタッフ、もしくは運営会社であるFTT合同会社の人間の名前をもじったものだと推測できる。
続く「黄金の和牛肉寿司」(1280円)は、海苔とご飯の上に和牛の生肉やうに、トリュフ、キャビア、いくらが盛られており、非常にゴージャスな見た目となっている。一口で食べられるサイズ感であり、それぞれの食材のコラボレーションを一度に口の中で味わえる。食べてみると、和牛はとても柔らかく、濃厚でとろける口当たり。また海鮮系の磯の香りが漂ってきて全体的にさっぱりした味わいであった。
名物「燃える鶏の丸焼き」のコスパは?
最後に到着したのは、「億万鳥者 新宿本殿」の看板メニューとなっている「貴族の遊び 燃える鶏の丸焼き」(1780円)。店員が目の前で炙る豪快なパフォーマンスを行うため、これが目当ての客も多いという。実際は店の写真ほどの迫力はなかったが、鳥の丸焼きの見た目は非常に香ばしそうで食欲をそそられる。なおパフォーマンス後は、店員が鮮やかな手さばきで、もも肉、手羽、胸肉に切り分けてくれた。
味はというと、薄味で鶏の旨味が感じられるやさしい仕上がり。また軽く噛むだけで肉の繊維がほろっと崩れるほど身が柔らかかった。赤みがかっている部分が少々気になったが、12時間の低温調理をしているとのことなので問題ないだろう。
ただ、噛むごとに鶏肉の旨味を堪能できる美味しい料理なのだが、1780円という居酒屋にしては決して安くない値段を考えると、もう少し豪快さやこだわった味付けがあっても良いのではないかと感じる。コスパ的には疑問が残った。
訪れる場合は覚悟が必要?
1億円かけて建てられた組子や金箔の空間に、パフォーマンスを重視して作られたキャッチーな料理は、一度訪れたら目に焼き付くこと間違いなし。ただ今回かかった合計金額は5460円で、頼んだメニュー数の割に高めだと感じたので、訪れる場合はその覚悟は必要だろう。
店員のテンションの高さと派手な店内装飾もあり、しっぽり飲みたい日やひとりで訪れる場合には向いていないが、いつもの居酒屋とは一味違う雰囲気を楽しみたい日や、友人や恋人と盛り上がりたい日にはぴったりのお店だろう。