木村佳乃主演の連続テレビドラマ『後妻業』(フジテレビ系)の第2話が29日に放送され、平均視聴率は第1話から2.2ポイント減の6.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だったことがわかった。
「後妻業」とは、遺産相続目当てで資産家の老人の後妻に収まり、次々と大金をせしめる詐欺のこと。木村は、天才的な手管で男をたぶらかす後妻業の女・武内小夜子を演じる。ターゲットを小夜子に紹介する結婚相談所経営者・柏木亨を高橋克典が、小夜子に狙われた資産家の娘・中瀬朋美を木村多江が演じる。
第2話では、小夜子が中瀬耕造(泉谷しげる)の隠し財産をまんまと手に入れ、用済みになった耕造を死に追いやる様子が描かれた。小夜子は「葬儀に400万円かかる」として朋美にカネを出させるが、実際には葬儀会社と結託して100万円にも満たない葬儀で済ます。小夜子への不信感を募らせた朋美は、私立探偵の本多芳則(伊原剛志)の手を借りて彼女の化けの皮をはがす決意を固めた――という展開だった。
相変わらず木村佳乃のエセ関西弁はひどいし、演技にも悪女らしさが感じられない。年老いた男性と次々に結婚しては死に追いやり、遺産を手にする女ならもっと腹黒いと思うのだが、木村の演技はどこか無理しているように見えて仕方がない。
朋美の夫・司郎(長谷川朝晴)と事務所スタッフ・山本絵美里(田中道子)との怪しげな関係や、朋美が芳則に好意を抱いているようにも見えるそぶりなど、本筋とはあまり関係なさそうなところにまで話が広がっていくのも、“尺稼ぎ”のように見えてあまり好感が持てなかった。
その半面、臨終を告げられた耕造に小夜子と朋美が交互にすがりつき、泣きながら何度も何度も互いに割り込んでいく場面はコントのようで大いに笑えた。ここまで振り切って「これはコントですよ」と視聴者に知らせてくれれば、こちらも目くじらを立てずに気軽な気持ちで見られるというものだ。木村佳乃の演技がつたなく見えるのも、もしかしたら「お芝居が下手な小夜子」を演じているのかもしれないと思えてきた。
とはいえ、「まだまだネタドラマとしては弾けきれていないなあ」などと思いつつ視聴していたが、ラスト数分で驚きの展開が待っていた。耕造を殺して大金を手にした小夜子は、「決まり事やから」と自信が育ったとおぼしき児童養護施設内の教会を訪ね、ロザリオを掲げて祈りをささげたのだ。自身の所業を悔いているようにも見えるが、確固たる信念を持っているようにも見える。迎えにきた亨に「ご苦労さん」と声を掛けられ、肩を抱かれた小夜子は今までに見せたことがないほど悲しげな表情を浮かべていた。
映画版の『後妻業の女』とは異なり、どうやらドラマ版の小夜子は「人をだましてカネを手にするのが楽しくて仕方がない」というサイコパスではなさそうだ。少なくとも罪悪感はありそうだ。とすると、木村佳乃の演技がいまひとつ悪女っぽくないのもうなずける。木村が悪女になり切れないのではなく、悪女になり切れない小夜子を演じているのかもしれないからだ。小夜子の過去が垣間見えたことで、これ以降の展開が俄然おもしろくなってきた。第3話以降も予想外の展開で視聴者を驚かせてほしい。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)