「食べログ」「ぐるなび」「ホットペッパーグルメ」をはじめとした、外食をする際の店探しや予約といった場面で便利なグルメサイト。多くの人が、サイト上のレビューやランキングを参考に飲食店を選ぶようになっており、完全に定着したかに見えた。しかし現在は“グルメサイト離れ”といっても過言ではない状況にあるようだ。
飲食店向けの予約・顧客管理システムの開発や提供などを行う、株式会社TableCheckが実施した「グルメサイトに関する消費者意識調査」によれば、グルメサイトの利用頻度が「増えた」と答えたのは全体の10%。これに対し、「減った」「まったく利用・閲覧しなくなった」と回答した人を合わせた割合は、それを大きく上回る19%だったという。
こうした動きの背景にあると思われるのが、大手サイトに掲載されているレビューやランキングに対する不信感だ。昨年の秋頃には、それらが広告掲載料と連動しているのではないかとSNS上で大きな話題となり、その信頼性に疑問を抱くユーザーが急増。前述の調査でも、グルメサイトの点数やランキングについて、「あまり信頼していない」「まったく信頼していない」と回答した人が、合わせて26%にも上ったという。
そこで今回は、グルメサイト問題について積極的に発信している「飲食店専門コンサルティング リライト」代表・川﨑理明氏に取材を行い、大手サイトの公平性に関する問題や利用者数減少の原因などについて、話を伺った。
「食べログ」は点数操作をしているのか?
まずは、昨今噂されている評価点の操作疑惑について、「食べログ」を例に語っていただいた。
「私はエンジニアではないので詳しいことはわからないのですが、『食べログ』の評価に使われているシステムは、かなり複雑な仕組みになっていると考えられます。どこか一つの店の点数だけを、3.5や4.0といった高評価に変えるということは、簡単にはできない仕様になっているはずなんですね。そうした複雑な構造のシステムでないと、外部からハッキングされて、評価を書き換えられてしまう可能性があるためです。
ですから『食べログ』の運営に携わっている人が金銭を受け取って、特定の飲食店の点数を高くするようエンジニアに依頼したとしても、おそらく評価を変えることはできないでしょう。そういった推察から、あくまで個人的見解ではありますが、『食べログ』運営が高額の広告掲載料を出してくれた店舗を、点数操作で高評価に書き換えているという不正は、していないだろうと考えています」(川﨑氏)
だが、過去には飲食店のオーナーが有名なレビュアーに働きかけ、金銭を支払ってやらせレビューを書いてもらった事例は存在しており、現在でもそういった取引を行おうという動きはある模様。
「『食べログ』側としても、そういった不正をただ黙って腕を組んで見ているだけではありません。いたちごっこではあるものの、管理委員会を設けたり、レビュアー同士のオフ会に潜り込んだりして、不正がないように目を見張っているようです」(同)
もちろん、疑惑の目が向けられたことも、利用者が離れてしまった原因ではある。しかし、グルメサイトに掲載されている評価を参考にしない人々が増えた背景には、ほかにも要因があるという。
「一般人レビュアーの評価システムをサイトに取り入れた『食べログ』は、ユーザーがお店選びに失敗しないということをコンセプトに掲げています。レビュアーたちの書く情報を頼りに、お店を選んでもらおうという趣旨なんですね。
実際に『食べログ』のコアなユーザーは、食通の方が投稿したレビューの内容をお店選びの指針にしていますし、一部の有名なレビュアーには、その人が評価したお店に行きたいというファンが付いています。ただ、それはある意味でクローズドな世界なので、一般的なユーザーの視点からは、あまり面白くない内輪の盛り上がりに見えてしまっているのではないでしょうか。
また、一般ユーザーのレビューには、どこのお店で、何を食べて、その感想は……といったように、箇条書きにして簡単にまとめているようなものも少なくありません。こうしたこともあって、口コミ自体のコンテンツとしての魅力が徐々に低下してきていることも、利用者が離れる一因になっていると思います」(同)
グルメサイトの存在感が薄まっている理由
レビューというコンテンツの魅力が失われつつあること以外にも、“グルメサイト離れ”を加速させているものがあるという。
「ユーザーが離れている原因となっているのがSNS、なかでもインスタグラムの台頭ですね。インスタグラムのハッシュタグを使って、店探しをする若者が増えているようで、弊社のクライアントでも、インスタグラムから予約につながったというケースが増えているという話は聞きます。SNSがグルメサイトの代わりになるとまでは言いませんが、その一部の機能を担い始めているのは間違いないでしょう。
あともう一つ、グーグルの検索結果も大きな要因となっているでしょう。2018年頃から、『地域×業態』で検索すると、上部に三店舗、関連性の高いお店が並び、そこをクリックすると、グーグルマップのアプリや画面に飛んで、地図上でお店を表示してくれるようになりました。
それまでは、グルメサイト内の検索機能を使って、『地域×業態』で検索する人も多かったのですが、最近の傾向としては、グーグルで調べてそのままお店を選ぶという流れが顕著に見受けられます。ですからグルメサイトのサービスのなかでも、検索機能の利用が一番減ってしまっているのです」(同)
では今後、グルメサイトがどうなっていくのか、予想してもらった。
「例えば『ぐるなび』は、小さなグルメメディアと数多く連動し、自サイトへのリンクをはってもらえるように動いています。『ぐるなび』というサイト自体ではアクセス数を稼げないので、他サイトのリンクからアクセスを増やそうという努力をしているわけですが、言ってしまえば、それほどアクセス数の減少に困っているのです。
実際に、グルメサイトからの予約は減っているようで、前年比を超えられない飲食店も多いようです。グルメサイトが消えてしまうことはないでしょうが、その存在感は薄まっていると思いますし、その効果や効力は今後さらに失われていくのではないでしょうか」(同)
公平性に疑惑の目が向けられたことから、人々の信用を損ねてしまったグルメサイトだが、ユーザーが離れてしまった要因はそれだけではなかったようだ。SNSなどが台頭しつつある今、利用者に寄り添うサービス改善ができなければ、さらに厳しい立場へと追い込まれることだろう。
(文・取材=後藤拓也/A4studio)