シャープの電子ノート「WG-PN1」、1度使い始めたらコレなしじゃ生きられなくなった
あなたは会議のメモをどのように取っているだろう? 最近はノートPCやタブレットPCで、キーボードをパカパカ打っている人も多い。もしメモに図が必要な場合なら、タッチパネルでイラストだって描ける。こんなにデジタルガジェットがオラオラ! と幅を効かせる時代だが、ノートやメモなどレガシーな紙デバイスを使っている人も多い。実は筆者もその一人で、昨年まで無印良品やファミリーマートで売っている、A5サイズのドット罫線の入ったメモを使っていた。
紙デバイスは文字もイラストも描けるし、マーカーで重要な部分を○で囲んだりも簡単。何より電池切れの心配がない。さらに言うと、PCやタブレットだと、ある程度机などのスペースがないとメモするのが難しい。でもA5サイズのメモだったら、工場見学で歩きながらメモしたり、立ってインタビューしてるときでもメモできる。だから紙最強! しかも機動性のあるメモ帳は、A5サイズからB6サイズ。これが長年取材をしてきた筆者の結論だ。
そんな“紙最強! 信者”の心をガッチリ掴む、デジタルデバイスが登場! それがシャープの電子ノート「WG-PN1」だ。
サイズはA5判程度と理想的、紙のように自由に書けて、バッテリー長持ちで電池の心配ほとんどなし。もちろん電車の中でも使えて機動性も抜群。
電子手帳から続くシャープの電子ノート
シャープはデジタル黎明期から、世界に先駆けて手帳を電子化してきた老舗メーカー。電卓サイズの電子手帳、予定やアドレス帳などの個人情報をメモしておけるザウルス、その小型版のWizなどのPDA(Personal Digital Assistant)を発売していた。いまはスマホに取って代わられてしまい、ほとんど見ることがなくなってしまった。しかし2012年から、シャープの電子ノートが復活、というか新発売。ここで紹介している電子ノートそっくりなのだが、ちょっとだけ、でも大きく違う。それは画面が白黒液晶という点だ。そして電池を長持ちさせるために、腕時計と同様に、バックライトを持たない反射式液晶という点。
反射式液晶は、電池が長持ちするという反面、暗いところでよく見えないというのが難点。だから腕時計にはランプがついていて、暗いところで時間を確認する場合はランプを点灯するようになっている。
さて、初代の電子ノートは、電卓と同じでランプやバックライトがない。となると、明るい部屋でしか使えないのだ。つまり、新製品発表会などは、たいてい部屋を暗くしてパワーポイントを使って説明したり、部屋を暗くして新製品にかぶせた布切れを取るオープンベールをするときなど、メモがまったく取れないというわけ。
でも新型の電子ノートは、Einkという液晶とは違う画面が採用されている。見た目は液晶とほぼ変わらないけれど、非常にコントラストが高いので見やすいのだ。だからEinkはKindleなどの電子ブックリーダーに使われている。さらに液晶と違って、かなり斜めから見ても画面が薄くなったりしない。
その仕組みの説明は別の機会に譲るが、感覚的には昭和の時代にあった白黒のお絵かきボード。今でも事務用品として売られているが、ペン先にインクではなく、小さなマグネットがついていて、白いボードにペンで書くと、ボード内の砂鉄が磁石にくっついて文字が浮かび出るというもの。
Einkはコレをちょっと電子的にやっている。画素の中には極微小のオセロのコマが入っていて、電気でオセロの白と黒面を切り替えるのだ(ざっくりした技術解説なので、詳しくはWikiなどを読んでいただければ……)。液晶はずっと電気を通しておかないと液晶シャッターを開いて置けないが、Einkは書き換えのときだけしか電気を使わないので、電池が超長持ちなのだ。
ちょうどいい大きさの電子ノート、書きやすい電子ノート
おそらく皆さんからツッ込まれるところは、この2点。
・スマホのギャラクシーノートにも手書きメモがあるじゃん!
・パソコンやタブレットでも手書きできるじゃん!
確かにギャラクシーノートには、添付のペンで自由にメモやイラストが書けるアプリが用意されている。ただこれ実際に使ってみると、たくさんメモを書くのに向いていない。電話の伝言メモを残すときに使う5cm角の付箋程度しかメモできないのだ。だからTIPSや備忘録ならこれで十分なのだが、取材や会議のメモに使うには、サイズが小さすぎ。これがギャラクシーノートの弱点。またスマホなので、ちょいちょいバッテリーの心配も残るだろう。
となれば画面の大きなパソコンが便利そう。実際に取材現場では、キーボードとペンを駆使している方も多く見かける。ただ「よそ」から見ていてもわかるのは、ノートPCのように立てたディスプレイに図を描くのは凄く大変そう。人によっては図を手書きするときは、ペンを持ってディスプレイを開いて手書きして、終わるとペンを机やポケットにしまって画面を戻してキーボードをタイプしてと忙しそうだ。なにより筆者は、キーボードを打つのが遅く、メモは手書きしたほうが圧倒的に早いので、文字も打つより書いちゃうほうが早いのだ(笑)。
ギャラクシーノートやパソコンに太刀打ちできない電子ノートの弱点は、停電中の真っ暗なビルの中ではメモできないという点。ただそんなシーンはほとんどなく、映画館の中でもスクリーンの明かりがあればメモは取れるほどコントラストが高い。この世の中、暗い夜道だってLED照明でかなり明るいので、メモできない場所なんてそうそうないのだ!
本当に紙に代わる電子ノートがついにできた!
電子ノートには、大きく分けて3つの機能がある。まず一番使うのは「Notebook」ボタンのメモ帳だ。Notebookの棚には、いくつもの「ノート」を置くことができ、そのノートには「ページ」を何ページも持てるようになっている。ノートブックとページの2階層で管理できるので、どの単位でノートをつくるかは自分次第だ。
筆者は発表会ごとのノートに加え、「各案件ごと」のノート、「ネタ帖」ノート、用語「ノート」をつくっている。それぞれのノートには「分類」が付けられ、日付と分類ごとに検索ができるので、目的のものがすぐ見つかる。また、それぞれのノートには手書きのタイトルがつけられるので内容もすぐわかる。
ただ文字がテキストになっていないためキーワード検索ができない。できるだけ薄いノートを多くつくるのがいいだろう。
なおノートの種類は、次のようなものがある。一般的なノートから、専用ノートまで。さらにシャープのウェブページからフォームをダウンロードして追加もできる。
【内蔵フォームは全部で18種類】
【情報やフォーム(追加ダウンロード)】
1冊のノートに複数のフォームを混在させることも可能だ。通常は「ノート用の基本フォーム」を選んでおき、「ページ追加」ボタンを押すと自動的にページを追加できる。たとえば個人ごとのノートをつくり、そこにパーソナルデータや血圧などの情報を書き込むこともできるし、血圧ノートを作成してページごとに個人に切り替えてもいい。
あとは鉛筆と消しゴム、マーカーでメモを取るのとまったく同じ。ペンを選べば文字や図を書けるし、消しゴムでなぞれば文字や図形を消せる。もちろんフォームの罫線が消えることはない。
またマーカーを選ぶと、重要な事柄にマークすることが可能。文字の上をなぞっても、しっかり文字が透過して見えるので使いやすい。さらに便利なのは、マーカー消しゴムを使うとマーカーだけを消して下の文字は残せる。これは実際の文房具にはない機能なので、超便利に使える。
図をしっかりキレイに描きたい場合は、図形描画ツールを使うと、直線や四角、○をキレイに描けるほか、文字や図形をコピー&ペーストすることもできる。操作性で唯一、液晶とEinkが違う点は、図を描いたあとに白紙ページを表示させると、前に描いた図がうっすらと残る点。先に各画素の中にオセロのコマが入っていると説明したが、通常の画面切り替えだとオセロのコマがしっかり反転しきれない場合がある。これがEinkのクセ。
こんなときは「リフレッシュ」というウェブブラウザの再読み込みと同じ丸矢印ボタンを押すと、キレイな白紙になる。文字をメモしている分には、ほとんどリフレッシュすることなく使えるが、図が多い人は適宜リフレッシュしたり、自動リフレッシュ機能をONにするといい。
肝心の書き味はというと、紙とポールペンに近い感じ。ただ、しばらく(3分ぐらい)メモをしていないと、画面は表示されているもののスタンバイ状態になるらしく、最初の1画はペンを置いて0.5秒ぐらい待ってから書くといい。ザザザー!と描き始めると、いつも書き始めの1文字が抜けるって感じになるので注意。ただしメモを取り続けているときは、殴り書きしてもしっかり追従してくれる。
ToDoはGoogleスケジューラより呼び出しやすいので使い分け2>
電子ノートの弱点は、世界標準のスケジューラといっていいGoogleスケジューラと連携できない点。なのでパソコンのある環境なら、ToDoはGoogleスケジューラを使ったほうが便利。
でも、スマホしか持っていない場合は、電子ノートのほうが操作時間が短くてすむ。なぜならGoogleスケジューラのToDoは呼び出すのが面倒な場合が多く、電子ノートならアプリを操作している間に、ちゃっちゃとToDoがスタンバイできちゃう。急ぎのメモは電子ノートで、しっかりリストをつくる場合はPCやスマホでと、使い分けるのがいいだろう。
しかもこのToDo、よくできていて、文字は画像扱いになってしまうものの、終了のチェックをすると枠内の文字(画像)が消えるから便利。また★マークを押すと、重要案件として検索できたり、ToDoに重みを付けられる。
予定はリフィル派なら便利に使えるスケジュール機能
おそらくほとんどの読者は、Googleスケジューラを使っているだろう。でも新幹線の中でたまに見かけるのが、今でもリフィルで予定を管理している人。B5サイズの大きなノートに書いているビジネスマンも見かける。
予定はノートで管理するのが一番! という方にオススメするのが、電子ノートのスケジュール機能だ。予定表のフォームは、次の5種類。
これに加えて1週間のフォームには、1週1ページのメモ欄を差し込めるバージョンも用意されている。これまでどおり予定は、テキストの文字情報にならないため、Googleスケジューラと連携はできないが、リフィルなどで見慣れた予定を書き込めるので違和感なく使えるのが魅力だ。またデジタルなので、予定を移動する場合は枠や文字をそのままカット&ペーストできるので、紙の予定のように消しゴムを使ったり、ペンで塗り潰さなくてもいい。
パソコンとの連携はUSBでBMP画像ファイルとして
電子ノートのメモは、すべてパソコンに画像として転送できる。またバックアップなども簡単。もちろんPCにある画像データを電子ノートにコピーすることも可能。
必要なのはUSB TypeCケーブルと電子ノートのページからダウンロードしたPC用のソフトだけ。これで双方向のデータのやり取りが可能になる。
パソコンで作成した白黒のBMPファイルを、電子ノートに転送することもできる。独自の単価表や時刻表などをつくって、電子ノートに保存しておくのもいいだろう。
手書き派のビジネスパーソンはぜひ! 価格も2万円でお手軽
筆者が電子ノートを自腹で買って使いはじめてすでに3カ月ほど。紙のノートだと分厚くて、左右の見開きでメモするときは段差があって書きづらかったが、電子ノートはソレを一挙解消。
混雑する電車の中でも、街中で立ってでも、工場取材で他の媒体と併用しながらの取材でもメモが取れる。Einkになって最高の機動力を得た電子ノートの最終形態といっていいだろう。
マニュアルではバッテリー寿命は10日となっているが、毎日頻繁にメモするわけでもない筆者は、1カ月充電しなくても週数回ある新製品発表会も余裕でメモが取れるし、取ったメモを見ながら原稿が書ける。価格はなんと2万円! 漢字変換機能などを搭載せず、あくまでメモを取ることを主眼にしたことで、ここまで安く・軽く・薄くなっている。
ようやく紙の領域にまで達した電子ノート、手書き派のビジネスパーソンにはぜひお試ししてほしい。おそらく筆者同様、一度使ったらコレナシにいられなくなるはずだ。
(文=藤山哲人/体当たり家電ライター)