●自分が勝手に分析され、何もかもが赤裸に?
しかし、グラフ検索はこのようなポジティブな使い方ばかりでなく、ネガティブな使い方も可能だ。そのリアルな姿は、グラフ検索が発表されて間もない2013年1月13日に、Tom Scott氏が自身のTumblrで公開した「Actual Facebook Graph Searches」というポストを見れば一目瞭然だ。
そこには「売春を好む既婚者」「人種差別主義者を好む企業」「中国政府が禁止し、弾圧を行っている『法輪功』が好きな中国人」といった、かなりブラックな検索結果もたちどころに表示してしまうことが示されている。
どのような仕組みで検索結果が表示されるのか、その詳細は明らかにされていない。また、現在はβテスト中であり、実際のリリース時には大幅に仕様が変わっているかもしれない。だが、この検索は、単に自分がプロフィールに掲載している情報だけをベースにしているものではないことは明らかだ。
これは推測に過ぎないが、ユーザーが「いいね!」したり、自ら投稿した内容や、コメント、交友関係、過去に実行した検索内容などを分析し、膨大なデータを分析してこのような検索ができるようになっていることが想定される。もちろん、Facebookの「重要な」コンテンツである広告データへの「いいね!」も対象だ。
この推測が正しければ、ユーザがどのような人間で、どのような趣味・趣向や信条、宗教や政治観、倫理観などを持っていて、どのような企業や団体を好ましく思っているのか、これまでのFacebook上のアクティビティすべてが解析され、検索できてしまう。これだけでも恐ろしいが、もっと恐ろしいのは、Facebookのシステムが自分の本当の姿とは異なる分析を行い、勝手に本来の自分とは違う人物像に仕立て上げられてしまう可能性があることだ。
「近所に住む独身女性で、男性に興味があり酔っ払うのが好きな人」「既婚者で売春を好む人」
という検索を実行した結果、合致する人が多数表示されてしまっている
●根本的な対策は「アクティビティログ」を洗うこと
Facebookでは、グラフ検索の公開範囲はユーザーが設定したプライバシー設定に基づくもので、この条件を超えて検索されることはない、と説明している。だが、Facebook社や「Actual Facebook Graph Searches」の検索結果には「友達になる」ボタンが付いているものもある。そのユーザーが情報の公開範囲を間違って設定しているか、あるいは、システム的に見えてしまうものがあるのかは不明だ。
自分のアクティビティがFacebookに蓄積されている限り、どこから情報が漏れるかわからないし、誰かがその情報をオフラインで誰かに伝えるかもしれない。しかも、何年も前に投稿したり「いいね!」した情報の公開範囲など、普通は忘れていて当然だろう。
Facebook社がプライバシー設定の仕様を変更してしまうことも懸念される。これまで、Facebookは予告なしにさまざまな仕様を変更してきた。
たとえば、「プライバシー設定とツール」画面には、昔は「あなたのタイムラインを氏名で検索できる人」という項目があり、公開範囲を設定できた。しかし、いつのまにかその設定項目が消えているのだ。このように、グラフ検索を有効に機能させるため、さらにFacebookのプライバシー設定が変更される……という可能性も否定できない。
(ユーザーによっては、「あなたのタイムラインを氏名で検索できる人」が表示される
人もいるようだ)」