コロナで“助け合い”の取り組み広まる…ローソン、給食事業者から余剰品買い取りヒット商品生む
新型コロナウイルス感染拡大のニュースが続いている。そんななか、ネット上にはさまざまなデマが飛び交い、振り回された方は多いのではないか。
「マスクとトイレットペーパーは中国で作っており材料が同じだから不足する」
「コロナウイルスは熱に弱いので、27度のお湯を飲めば予防になる」
「茨城県で感染者が出ていないのは(3月17日に初感染者が出た)納豆のため。新型コロナウイルス感染予防に効く」
これはすべてデマだ。災害時は、確かにデマが多く飛び交うようになる。しかしそんななかでも、新型コロナ対策として嬉しい自発的な支援の動きも見られた。全国を対象にスピーディに支援できるインターネットの力を感じた例も多かった。オフラインを含むさまざまなオンライン支援の実例をご紹介するとともに、インターネットの力について考えていきたい。
給食事業者の余った食材を購入して支援
突然の休校により、牛乳や野菜、肉などの食材が大量に余ってしまい、給食事業者や生産者が大打撃を受けた。そこで、大手スーパーのライフコーポレーションは270店ほぼ全店で給食の牛乳を販売する支援を行った。同様に、コンビニエンスストアのローソンではホットミルクを半額で販売する支援を行った。ホットミルクの売上は100万杯を突破、“からあげクン”を超えるリピート率となったそうだ。
また、通販サイト「うまいもんドットコム」において、「食べて応援学校給食キャンペーン」として特設サイトが開設された。こちらでは給食関連事業者の食品等が送料無料で販売され、売り切れとなる例も続出している。
「普段給食には助けられている。ロットは少し多いけれど冷凍しようと思う。少しでも助けになれば」と、小学生の子どもを持つ40代主婦も食材を購入したという。
ふるさと納税サイトなどで選んで支援も
ふるさと納税で支援の寄付ができる動きも進んでいる。寄付をした分は免税扱いとなるので、お気に入りの事業者やがんばってほしい制度などに寄付する家庭もあるようだ。
たとえば「ふるさとチョイス」では、給食事業者、外食関連事業者、観光関連事業者、花き関連事業者などから選んで支援できる「事業者支援」、感染症対策、医療体制構築、児童クラブに通う親子、子どもの居場所から選んで支援できる「ガバメントクラウドファンディング」、子育て家庭への食料・物資支援ができる「子育て家庭支援」などがふるさと納税対象として用意された。
同様に「さとふる」でも、観光客激減で打撃を受ける地域事業者に対して「さきに寄付」、イベント自粛で打撃を受ける花き事業者に対して「花を飾って」寄付ができるようになっている。
新型コロナウイルスの影響で予約や来客数が激減している飲食店は多い。そこで、フードテックサービス「ごちめし」を通じて応援したい飲食店へ食事代を先払いし、コロナウイルス終息後に店を訪れてもらう「さきめし」というサービスも始まっている。「感染したら周囲に迷惑をかけるから、今は食べに行きにくい。けれど、本当は食べに行きたい。だから、なくなったら困る店に先払いした」と、利用した40代男性は語る。
多くの事業者による学びのコンテンツ無料提供
多くの学校が、3月の学習が終わらないまま休校に突入してしまった。子どもたちはほぼ1カ月間自宅中心で過ごすこととなってしまったのだ。塾や習い事なども休講となり、子どもたちが学べないことに不安を感じた保護者は多い。そこで、多くの事業者が無償で学習コンテンツやサービスを提供、支援した。
たとえば「アオイゼミ」では、通常は有料会員のみが見放題の授業動画を中高生向けに3月31日まで無料開放。このように、授業などの動画をオンラインで無償提供した例はとても多い。
オンライン英会話レッスン「Weblio英会話」は、小中高校生と特別支援学校の児童・生徒を対象に、3月31日まで4回分のレッスンを無料提供。オンラインで学べる英会話レッスンは多数あるが、こちらも多数提供された。
ディズニー・プログラミング学習教材「テクノロジア魔法学校」は、小中高校生と先生対象に、4月の休校延長に合わせて4月上旬まで無料公開された。オンラインで学べるプログラミング教材も多いが、こちらも無料提供された例が多い。
このような動きには助けられた家庭も多かっただろう。有料サービスやコンテンツを無料でお試しできる機会となり、気に入ったサービスやコンテンツが見つかった方も多かったのではないか。
図書館なども閉館したり、子どもの利用が制限された例が多かったため、学習系漫画などを中心に多数の電子書籍が無料で公開された。たとえば、小学館の学習まんが『少年少女日本の歴史』全24巻は、現在も無料公開されている。ネット環境と端末さえあれば読める電子書籍の利便性を改めて感じた人も多かっただろう。
オンライン化促進につながる動き
卒業式中止や縮小も相次いだ。そこで、「せめて記念写真だけでも」と、各地の着物・袴レンタル業者や写真館などが、記念写真サービスを行ったという。「せっかく借りた袴姿で、記念写真だけでも撮れてよかった」と、卒業式が中止となったある女子大生は語る。
サイバーエージェントは、アバターコミュニティアプリ「ピグパーティ」で、3月9日に仮想卒業式「#ピグパで卒業式」を開催。卒業アイテムも無料でプレゼントしたそうだ。
中止や延期などが重なり、残念なことが多かった3月。4月になってもまだ中止や延期の報告が続く状態だ。しかし、このようなオフラインを含むオンラインの支援には、心を動かされた人が多かったのではないか。同時に、テレワークでビデオ会議をしたり、オンライン授業を受けたりする人も多い中、インターネット環境の大切さを強く感じさせられた。
これまでも働き方改革により、テレワークなどの場所にとらわれない働き方は推進されてきたものの、実際に取り入れられている企業は多くはなかった。しかし、これでテレワークやオンライン化が促進されることは間違いないだろう。
また、大学などでは、当面対面での講義は最小限とし、オンライン化を奨励・推進するという。教育機関でのオンライン授業やコミュニケーション推進が進むことも間違いないだろう。
すでに述べたとおり、休校やテレワークが続くなか、インターネット環境やサービスの存在感が増している。実際、NTTコミュニケーションズが平日午前9時から午後6時までのインターネット通信量を2月第1週から1週間ごとに分析したところ、第3週までは大きな変化はなかったものの、第4週には数%の増加。3月第1週からは35%、2週には40%増えるなど、大幅に増加している。
新型コロナウイルスに負けないためには、一人ひとりが今できることを探していく必要がある。インターネットができること、インターネットを使えばできることはまだまだありそうだ。
(文=高橋暁子/ITジャーナリスト)