AIアプリはエロ要素のないエロゲー?
その男性のなかでも、特に20~30代が夢中になっている。会話をして仲を深めていくAIの構造は、恋愛ゲームやエロゲー(アダルトゲーム)に近づく可能性はないのだろうか。
「1990年代ごろから、恋愛ゲームやエロゲーが広がりました。これらにあってAI搭載アプリにないものは、『ストーリー性』と『セクシャリティ要素』の2つです。恋愛ゲームには必ずストーリーがありますが、AIにはストーリーが組み込まれていません。そして、エロゲーのセクシャリティ要素も排除されています。ストーリーもなく、セクシュアリティもないAIに20~30代の独身男性がハマっているとすると、そこで求めているのは、コミュニケーションのみということになります」(同)
LINEに「既読スルー」という概念があるように、若い世代は自分が送ったメッセージに長時間レスがないことに強い不安を感じる。その点、AI搭載アプリは、いつ話しかけてもその場ですぐに答えてくれるため、既読スルーや未読スルーをされた時のような不安を感じないで済むのだ。
「今後は、若い独身男性だけではなく、家族と離れて暮らす高齢者に向けたAIも普及していくと思います。コミュニケーションによって精神的なケアをしつつ、買い物に行くのが困難な高齢者のために、宅配サービスをするAI搭載アプリも出てくるかもしれません」(同)
しかも、AI搭載アプリは企業にとってもメリットがある。広告やマーケティングにおいて、大きな可能性を秘めているというのだ。
「AIに蓄積される、ユーザーの性別、年齢、趣味嗜好などのデータは、企業がほしい消費者情報そのもの。AIが得たデータを利用すれば、そのユーザーにあった広告を打ち出すこともできます。特に、若い世代は新聞や雑誌を読まないので、スマホアプリで広告を見てもらうしかありません。AI搭載アプリの普及は、企業にとって大きなビジネスチャンスというわけです」(同)
20~30代男性のさびしさや不安を解消し、企業にとってもメリットが大きいAI搭載アプリ。いわばWin-Winのツールとして、この先ますます普及していきそうだ。
(文=中村未来/清談社)