そのアップルにとって、米中の貿易戦争の激化は頭の痛い問題だ。今のところ、生活にとって重要なツールであるスマートフォンについては、中国による関税措置の適用対象から除外されているが、「データ送信機器」としてApple Watchはリストに入っており、その影響が懸念される。
また、トランプ政権の強硬な姿勢は、中国からの全輸入品に対する関税措置を引き起こす可能性があり、そうなるとiPhoneも関税を免れなくなる。単純に10%が価格に上乗せされれば業績への影響が免れないだろう。
二転するフェイスブックの中国オフィス計画
中国でのサービス展開は行っていないものの、グーグルは18年1月、深センに新たなオフィスを開設した。深センはハーウェイ、ZTE、ワンプラスといったスマートフォン企業が集まっており、ゲームを中心として大成功を収めるテンセントも本拠地としている場所だ。
グーグルは中国との間で数々の問題を抱え、10年には中国向けのグーグル検索サービスの提供を停止し、検閲に対して反対の意向を表明してきた。その一方で、深センのオフィスは北京、上海に続いて3カ所目となり、無視できない中国市場との関係性を模索している様子がうかがえる。
一方、フェイスブックもまた、中国市場を取り込みたいと強く願っているはずだ。ユーザ数を爆発的に増やすことができ、結果として広告売上の大幅な増加を見込むことができるからだ。フェイスブックは09年から中国で利用できなくなり、長年にわたる努力は実っていない。しかし18年7月24日、米紙ワシントンポストがフェイスブックのインキュベーションオフィスを浙江省に開設することを明らかにした。
しかしニューヨークタイムズは、フェイスブックに出された許可が、数時間後に当局によって取り消されたと報じた。浙江省の当局が許可を与える際、中国の国家インターネット情報弁公室との間で緊密な連携を取っていなかったことで怒りを買ったという。
こうなると、再び許可を得るのは難しく、フェイスブックが中国にインキュベーションの拠点を構える可能性は遠のいた可能性が高い。
それでも、フェイスブックを含め、シリコンバレー企業は中国への進出の可能性を模索し続けることになるだろう。一方、インドも中国に次ぐ人口を誇り、成長の可能性を見せる。インドと中国が諸外国からの投資を競うようになると、状況も変化するかもしれない。
(文=松村太郎/ITジャーナリスト)