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高杉康成「コンセプト・シナジーな経営戦略」

インダストリー4.0は革命か、空想か…ネットワーク巨大化がもたらすデメリット

文=高杉康成/コンセプト・シナジー代表取締役、経営学修士(MBA)、中小企業診断士

オーバースペックのプロダクトアウト的発想

 しかしながら、本当にこのようになるのでしょうか。現代の技術を使えば、路線バス、タクシーも含めてすべての交通網をひとつのネットワーク下に置くことは可能です。ICタグを使えば、各人の目的地を把握することもできるでしょう。実は、これらの技術は何年も前からすでに存在しています。にもかかわらず、なぜそれが実現されていないのでしょうか。そんなに便利なのであれば、すでに実現していてもおかしくありません。

 1980年代頃のアニメや空想の世界では、21世紀には車が空を走り、宇宙旅行が当たり前となり、人型ロボットが活躍している姿を目にしました。ところが、実際に21世紀になってみると、人型ロボットが少し活躍している以外はまだどれも実現していません。振り返ってみれば、自動車やロケット、ロボットの技術が進化しているという「仮定」を基に、「希望」を抱いていたのかもしれません。そう考えると、今抱いている4.0の理想形も、なんらかの「仮定」と「希望」が含まれている可能性は大いにあります。

 例えば、駅で目的別の乗客を誘導する際、時間通りに規則的に乗車してくれるという「仮定」が必要となるでしょう。また、すべての人がICチップを持ってくることもしかりです。人間では難しい何か複雑な要素が入ると、最後はなんでも「AI(人工知能)に任せればいい」という「希望」も入っています。つまり、実現すれば素晴らしい物語なのですが、そのなかには「仮定」と「希望」が多く含まれている可能性が非常に高いのです。

 また、ネットワークの巨大化によるデメリットもあります。「山手線の神田駅の事故で中央線の電車が遅れている」という経験をしたことがある人もいるでしょう。両線はつながっていないのに、共通の駅である神田駅で何か異常があったため、万一に備えて中央線も止める。それによって遥か遠くの八王子方面まで影響を受けてしまう。また、最近の事例でも、北海道の地震で主力の火力発電所が止まってしまった影響で、全道の電力供給が停止してしまう。証券取引所の売買システム異常、金融機関のATM障害など、ネットワークが大きくなればなるほど、ひとつのトラブルの影響が広範囲に広がってしまうのも事実です。

高杉康成/コンセプト・シナジー代表取締役、経営学修士(MBA)、中小企業診断士

高杉康成/コンセプト・シナジー代表取締役、経営学修士(MBA)、中小企業診断士

経営学修士、中小企業診断士、岡山県立大学地域創造戦略センター客員教授
神戸大学大学院 経営学研究科 博士後期課程中退(経営学修士、MBA)。日本屈指の高収益企業、キーエンスの新商品・新規事業企画担当を歴任。退職後、新規事業や新製品開発、ビジネスの付加価値向上などの分野において、大企業から、中小企業まで幅広い業種・企業の指導に携わる。一般消費者向けの小売店、ネット販売企業などにおいても、ビジネスモデルの転換、収益力向上、新製品開発などで数多くの実績がある。
最近では、次世代自動車(CASE)、次世代通信、ロボット、AI、IoT、VR・AR、農業クラウドサービスなど、さまざまな最先端・成長業界における新規参入の支援を、上場企業をはじめ全国の企業に行っている。こういった企業への指導実績から、テクノロジーについても非常に詳しく、最先端分野の知見を有している。専門分野は、ブルーオーシャン戦略、事業戦略、技術経営(MOT)、Webマーケティング。
コンセプトエナジー株式会社

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