インダストリー4.0は革命か、空想か…ネットワーク巨大化がもたらすデメリット
ドイツで官民一体となって打ち出された「第4次産業革命(インダストリー4.0)」という概念。今では日本でもその言葉が躍るようになり、企業の経営戦略にも影響を及ぼすようになってきました。ところが、このインダストリー4.0(以下4.0と呼ぶ)は本当に「革命」となるのでしょうか。「単なる空想」と断じる人も少なくありません。そこで、本連載では、この4.0が「革命」となるのか、あるいは「単なる空想」なのかについて、さまざまな視点から検証していきたいと思います。
まずは、この4.0について整理しましょう。要約すると、「あらゆるものがインターネットにつながるIoTの技術を使い、各工場の製造装置をセンサーとネットワークでつなぎ、世界各地の工場をまるでひとつの工場のように運用し、多様化した消費者ニーズ(カスタム化やコストダウン)に対応するために、物流やエネルギー、働き方も含め社会全体で生産を最適化すること」ととらえることができます。まだ少しわかりにくいと思いますので、この4.0を日本の首都圏の鉄道の例を使ってとらえてみることにします。
首都圏の鉄道は、JRをはじめ、地下鉄、私鉄などが網の目のように張りめぐらされています。現在は、鉄道が部分的に相互乗り入れなどで絡み合っていますが、これにすべての路線バス、タクシーまで含めて、首都圏の全交通をセンサーとネットワークでつなぎ、今よりもさらに「快適に、早く、安く」を図るために全体の交通システムを最適化するというイメージです。
「朝の通勤時に最寄りのバス停まで行き、遅れ気味の路線バスに乗って駅についたら相当混雑。ようやく乗れた1本後の電車は超満員。極めて窮屈で不快な空間の中、1時間ぐらい揺られ目的の駅に到着。その後は徒歩で出社」
現在の首都圏における典型的な通勤の例ではないでしょうか。もし、これが次のようになったらどうでしょうか。
「朝の通勤時のバスは1分も遅れずに到着。センサーにより乗客数の把握が可能となりバスの乗客が分散。座って楽々駅まで移動。駅ではICチップにより目的地を事前に把握。そのデータを基に電車の運転本数を制御し、目的地別に乗客を誘導。混雑は緩和し、今よりもより快適な通勤が可能となる」
このようになると本当に素晴らしいですね。センサーとIoT技術を使い、路線バスまでネットワークでつなぎ、首都圏の交通網全体をまるでひとつの交通網のようにする。まさに4.0の考え方はこのようなイメージです。