さらに、現在適用されている月2480円の 「月々割」と、月1000円の「おうち割」についても併用が可能だという。そのため、1回線当たり毎月8480円もの割引が適用されることになった。通話料にさえ注意すれば、割引額が請求額を上回り、月2円(割引額が請求額を上回ってもマイナスにはならず、ユニバーサルサービス料の2円はかかる)で運用できてしまう。
私の場合、契約中の回線のうち2本は2年半の契約期間、残り2本は1年の契約期間となっており、ある程度の長期契約者に対する優遇策である可能性も考えられた。しかし、今年9月にソフトバンクへMNP転入したばかりの家族からも、同様の割引がついたという報告があった。また、SNSを検索しても、この割引が適用されたユーザーの報告を多数確認できる。
解約を申し入れしないと、割引が適用されない
だが、ソフトバンクのこの対応を「ユーザー還元策」として評価すべきかどうかについては疑問が残る。電気通信事業者協会の報告によれば、昨年9月時点のソフトバンク契約者は約4000万件。このなかには従来型携帯電話(ガラケー)や「みまもりケータイ」「フォトビジョン」などの契約も含まれているため、すべがスマートフォンの契約ではない。もし全契約の約半数の2000万件に5000円の割引を適用すれば、単純計算で割引総額は1000億円になる。そのため、全ユーザーにこの割引が適用できるわけではない。
また、SNSで検索をした限りでは、この対応が始まったのは12月22日から。同月6日から21日までの間にMNPで転出をしたユーザーや、MNPで他社へ転出する意向をソフトバンクに伝えずに使い続けているユーザーには、当然ながらこの割引は適用されていないことになり、ユーザー間で不公平が生じていることになる。
“値引き”の実態
ソフトバンクでは、新規加入時の審査で、過去に料金滞納などを起こしていないにもかかわらず、「総合的判断により、ご契約できません」と契約を拒否されることがある。実際に私は2016年頃からソフトバンクに複数回にわたりMNPによる転入を試みたが、契約を拒否された。しかし、なぜか毎年3月だけはiPhone 7やiPhone Xといった、当時のトップモデルを端末代金0円で契約することができた。
現在はネット上のソフトバンク代理店「おとくケータイ.net」などで、MNPによる新規契約の場合、iPhone XRに対して7 ~8万円程度の端末値引きが適用されるケースも確認できる。この値引きは代理店の施策ではあるものの、ソフトバンク側から付与されるインセンティブを当てにした値引きであり、同社が契約獲得のためにかなりの値引きをしていることがうかがえる。
消費者からしてみれば、3月にMNPを利用して他キャリアに契約を切り替え、端末を買うというのがもっとも賢い判断といえよう。しかし、幾度となく繰り返されてきた行き当たりばったりの値引きでユーザーを獲得する売り方は、いまだに変わっていないようだ。
(文=山野祐介)