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野村直之「AIなんか怖くない!」

Kindle サンプルダウンロードを十数本いっぺんにやる…無料で大量の知識を並べて比較

文=野村直之/AI開発・研究者、メタデータ株式会社社長、東京大学大学院医学系研究科研究員
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「Kindleストア」より

 前回、AI(人工知能)に勝てる創造性を発揮し、知的生産者になるための図書館の活用や、タイプの異なる人との対話(自分の殻を破るのに他の人の殻を活用する感じ!)のことを書きました。すると、Twitter、Facebookの知人たちの間でシェア、RT、コメントなどで、かなり反響がありました。多くは、「共感した!」という内容です。今後とも、『AIに勝つ! ~強いアタマの作り方・使い方』に書ききれなかった、AI時代に生き残り、幸福に仕事をするTipsをこちらでも追加してまいりたいと思います。

図書館で10冊、20冊机に積み上げる代わりに

 どうしても図書館に行く時間がとれない、というコメントもありました。それに代わるオンライン体験として何をお奨めしようかなぁ、と考えて、表題の通り、Kindle のサンプルダウンロードを十数本いっぺんにやる、というのを推奨しようかと思い立ちました。

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 現時点のKindle個人アカウントで、職場のメインPCにダウンロード済の書籍一覧です。右肩に斜めの黒い帯があるのは、「サンプル」もしくは「新規」です。高速な端末なら、上図の27冊(クラウドには2288冊あります!)を交互に素早く開いて見比べることができます。今これを書いているPCは、4Kモニタを横に2台並べてますので、1冊あたりかなりな量を開きつつ、Webブラウザ上のKindleで、もう1冊開いて同時に見比べることができます。さらに、ワード画面などにコピペによる引用で、重要部分を3番目の同時閲覧画面で開くことができます。それどころか、「Alt+PrintScreen」で(Windowsなら)、画像としてKindleの各画面のスクショをとり、ペイントアプリ等にコピペすることで、同時に見比べるのに必要なだけ、いくらでも見開きを画面に置くことができます。下図は、拙著『AIに勝つ!』の目次部分のスクショをWindows標準の「ペイント」でモニタに表示しっ放しにしている状態をコピペしたものです。

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 このようにして、リモート(在宅)、オンラインで電子的に図書館で10冊、20冊机に積み上げる代わりの行為が、かなりできるようにはなりました。しかし、「目次+第1章」で済めばいいのですが、本文の中身を同時に見比べようとすれば、全部買ってしまうという贅沢ができない限り、無料の図書館の優位性が残っているわけです。

AI産業応用のレファ本から ~マーケティングの新境地はどの企業?

 前回、「レファ本」という言葉も初耳という方もいらしたので、今回は1つ、AI活用の実績、コツを50描いた準レファ本『世界のトップ企業50はAIをどのように活用しているか?』をご紹介します。あ、「準」って何? というご質問ですが、レファレンスというからには事典みたいに何千、何万項目はなくとも、その専門分野の “Must read” = 必読書が150冊くらいは紹介されててほしいけど、50事例というのは少し少ないかな。そんなくらいの意味です。リンク先の目次で判断いただけると思いますが、内容にはやや形容詞が多くて数字が少なく、技術的な仕掛け、勘所は記載がないものが多いので、定性的に「こんな盲点だった応用があるのか。自分の業界でも少し意外なところで役立っているのだな」などとビジネスパーソンが興味、関心を覚えるのには好適と思います。

 ただ、原著が出たのが2019年で、まだGPT-3はもちろんBERTなどの新世代深層学習による自然言語処理が産業界で実績ベースで活用される以前のものです。十分新しくはあるけど最新ではない点、お含みおきください。

 目次をみると、まず「PART1 AI戦略の先端を行く企業」で、提供する製品、サービスの中核にAIがあり、ビッグデータをユーザーから収集しマーケティングにも活用している全方位AI企業が挙げられています。アリババ、アルファベット(グーグル)、アマゾンアップル、バイドゥ、フェイスブック、IBM、JD.com、マイクロソフト、テンセントです。いわゆるGAFAM+IBMに、中国のBATですね。そういえば、フェイスブックはメタになったので、GAFAでなく、GAMA、マイクロソフトを入れたらGAMMAでしょうか。

 コカ・コーラ、マクドナルド、サムスン、スターバックスらの「PART2」、小売、消費財、食品、飲料会社に続いて、ザ・ウォルト・ディズニー・カンパニー、インスタグラム、ネットフリックスらの「PART3」、メディア、エンターテイメント、電気通信会社、そして「PART4」のサービス、金融、ヘルスケア企業、「PART5」製造業と続きます。マーケティングの新境地として紹介されているのが、PART4のハーレーダビッドソンです。はい、大型バイクのメーカーながら、PART5の製造業でなく、PART4のサービス、金融、ヘルスケア企業に入っているところがミソです。

 PART4には、顧客の信用度を過去履歴のデータからAIで判定、などが並んでいます。モノづくり企業のハーレーは、モノづくりにAIを使うのでなく、マーケティング、特に新規顧客の開拓、獲得にAIを使っています。限られたマーケティング予算を全部人件費に使うと、中小企業であっても数万、数十万に及ぶ潜在顧客の情報を調べ分析するのに、どうしてもごく一部しか相手にできなくなります。その選択にもバイアスがかかるし、クライアントの言葉(文章)の解釈にも、何千人相手で、平等、均等にできるものではありません。人間には不可能な人数の潜在顧客をAIが広く浅く分析することにより、「これまで顧客対象としていなかった、潜在的購入者が明らかになった」様子が描かれています。

 ヒトの認知バイアスを、KYなAIが克服してくれる。そこに、潜在顧客のSNSなどのクチコミの文章をAIで自然言語解析すれば、新規層のさらにどの細分が今後の有力顧客になるかまで見えてくる可能性があります。

ユーザーの将来ニーズを分析・抽出

 前々回DeepLをご紹介した連載の2ページ目「文章を数値化することでマーケティングにじわじわ革命」では次のように書きました。

「大量のクチコミ(多ければ多いほどマーケティングには嬉しいご利益があるけど作業時間は増えません!)の類似ランキング結果から、色のついた自分たちの言葉(企画書等からコピペ)の周辺に、似た意味合いの【お客様の言葉】をたくさん見つけることができます」

「え、なんでそんなのが重要ですって? だって、商品やサービスを探してWebで検索するのはお客様です。そのお客様が使う言葉を予め知っておけば、いわゆるオーガニック検索でも順位を上げられるし(SEO=Search Engine Optimizationといいます)、広告キーワードにも、最近お客様が使い始めた言い回しを採用できるではないですか! こんなAI併用で、お客様の言葉をいち早く収集、ランキングできた会社は間違いなく、ライバル企業を出し抜くことができます」

 これら、SEOや広告コピーの改善のためにお客様の言葉を分析するというのは控え目過ぎました。いや、マーケティング担当として、志が低すぎる、というべきでしょう。前述のハーレー社のように、AI活用により人間が思いもしなかった新しい層の発掘も可能になる。言葉を定性分析することで、消費者、ユーザーが心打たれたかどうかまで浮かび上がる可能性があります。

 このようなお話の続きは、ぜひ次のマーケティングやSNS関連のオンラインExpoの「商談ルーム」(別の商談ではなく雑談、相談の場です)で、30分ずつお話できれば幸いです。

(文=野村直之/AI開発・研究者、メタデータ株式会社社長、東京大学大学院医学系研究科研究員)

野村直之/AI開発・研究者、メタデータ株式会社社長、東京大学大学院医学系研究科研究員)

野村直之/AI開発・研究者、メタデータ株式会社社長、東京大学大学院医学系研究科研究員)

AI開発・研究者、メタデータ株式会社社長、東京大学大学院医学系研究科研究員。


1962年生まれ。1984年、東京大学工学部卒業、2002年、理学博士号取得(九州大学)。NECC&C研究所、ジャストシステム、法政大学、リコー勤務をへて、法政大学大学院客員教授。2005年、メタデータ(株)を創業。ビッグデータ分析、ソーシャル活用、各種人工知能応用ソリューションを提供。この間、米マサチューセッツ工科大学(MIT)人工知能研究所客員研究員。MITでは、「人工知能の父」マービン・ミンスキーと一時期同室。同じくMITの言語学者、ノーム・チョムスキーとも議論。ディープラーニングを支えるイメージネット(ImageNet)の基礎となったワードネット(WordNet)の活用研究に携わり、日本の第5世代コンピュータ開発機構ICOTからスピン・オフした知識ベース開発にも参加。日々、様々なソフトウェア開発に従事するとともに、産業、生活、行政、教育など、幅広く社会にAIを活用する問題に深い関心を持つ。 著作など:WordNet: An Electronic Lexical Database,edited by Christiane D. Fellbaum, MIT Press, 1998.(共著)他


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