アップルのiPhone 5sや5c、ソニーのXperia Z1など、この短期間に次々と新機種が発表されて、ますます加熱するスマートフォン(スマホ)の世界。今や各キャリアが揃えるラインアップも、ほとんどがスマホになってしまい、もはや新しく端末を買おうと思ったらスマホを選ばざるを得ない状況だ。
そんな時代だからこそ、ビジネスのPRやマーケティングにスマートフォン用アプリケーション(以下、アプリ)を活用したいところだが、中小企業の中には、今までアプリ開発の経験がないところも多いはず。外注するにも費用がまだ高いので、アプリ開発に手を出しにくいという声もある。そもそもアプリ開発のためには、専用のプログラムが必要だが、ウェブ制作を専門にしてきた会社でさえ、まだ比較的新しい分野であるアプリのためのプログラミング言語を修得していないところも多い。
そこで注目したいのが、8月5日にβ版のサービスが始まった、ニューフォリアのアプリ開発支援サービス「アプリカン」だ。最大の特徴は、アプリ開発のためのプログラミング言語を覚えることなく、HTML/CSS/JavaScriptといったウェブサイトの技術で開発できるという点。ウェブコンテンツを変換・調整することで、iOS(iPhoneやiPadのOS)/Androidの両アプリを書き出せるというのも便利だ。アプリ画面にバナー広告が表示されるが、完全に無料で運用できるというのも大きい(広告なしの場合は1アプリ当たり10万円)。
どのような背景を経てアプリカンは生まれたのか? ニューフォリアの代表取締役社長、多田周平氏に話を聞いた。
●安価なウェブサイトの制作費でアプリがつくれる
──アプリカンは、どういったニーズを受けて開発されたのでしょうか?
多田周平氏(以下、多田) 現在、アプリの市場では、制作期間を短くしたいというニーズがすごく多いんです。何かアプリを出したいと思っても、リリースが2カ月、3カ月先になってしまう上、iOSだと審査に時間がかかることもある。ウェブコンテンツをつくるより費用がかかるというのもハードルを高くしています。その状況をなんとかしたいというのが至上命題でした。
アプリカンという名前は、「アプリの缶詰」に由来しています。iOSやAndroidのアプリを入れ物に見立てて、ウェブコンテンツを詰め替えていくイメージです。一般的に、アプリよりもウェブコンテンツのほうが制作費は安いんです。今、アプリをつくりたいと思ったら、おそらくアプリの開発会社に相談に行くしかありませんが、これからは簡単なものであれば、ウェブ制作会社がアプリカンを利用してつくれるようになります。
──つまり、ウェブ制作会社もアプリ開発の仕事を受けられるということですね。
多田 そうですね。例えば、150万円でアプリ開発の仕事を受けたとすると、100万円は外注費に使っていた。それがアプリカンを使えば、1個当たり10万円でiOSもAndroidもアプリがつくれるので、利益を増やせます。
●わざわざネイティブでつくらなくていいアプリも多い
──単にウェブコンテンツをアプリに変換しただけでは、スマートフォンでウェブサイトを開いて見るのと変わらなそうですが……
多田 アプリカンでアプリ化すれば、アプリにしかない機能が使えるんです。例えば、カメラを起動して撮影した画像を保存したり、オーディオを再生させたりとか、プッシュ通知を表示したりとか。技術的な話でいえば、本来はアプリ用のプログラム(ネイティブ)で書かなければいけないところを、独自のライブラリを用意することで、JavaScriptでそのライブラリを叩いて制御できるようにしています。
──いろいろできそうですが、ゲームまでいくとウェブコンテンツを元につくるのは難しくないでしょうか?
多田 簡単にできるものと、そうじゃないものがあります。ソーシャルゲームぐらいなら全然大丈夫なんですけど、ゴリゴリ3Dを動かすようなものは無理です。アプリカンは開発市場をすべて食うものではなく、3Dを本気でつくるならネイティブでやりましょうというすみ分けを考えています。
一方で、世の中にはわざわざお金や時間をかけてネイティブでつくらなくてもいいアプリもいっぱいありますよね。じゃあアプリカンでつくってみたらいかがでしょうか、というアプローチなんです。
──実際、アプリ開発の相場って、いくらぐらいなんでしょうか?
多田 アプリ次第ですね。この前あった、動画再生用のアプリをつくりたいという事例では、国内の安めの開発会社に相談したら、iOS/Androidの両方で230万円という見積もりが出ました。そんなに規模の大きなアプリではなく、地図を押したら動画が再生されるというレベルのものです。これを中国にオフショアすると、だいたい半分の130~140万円くらい。それをアプリカンでつくってみたら、50~70万円でいけます。ウェブのコンテンツだけつくればいいので。
──かなり下がりますね。
多田 ウェブ制作は競合が多すぎて、例えば5ページぐらいの企業サイトをつくるときに、今では50万円を請求するのも難しくて、せいぜい20~30万円くらいになってしまう。じゃあ付加価値を付けるしかない。弊社もずっとウェブ制作をやっていて、本当に単価が安くなってきているのを実感しています。
──ご自身の苦労が、アプリカンの開発に反映されているんですね。
多田 ウェブ制作会社が、アプリカンに10万円の経費を払っても、まだ相場の高いアプリ開発の仕事を受けて、利益をあげていってもらえたらいいんじゃないかって。
──個人でアプリをつくりたい人も対象ユーザーに入りますか?
多田 そうですね。ウェブサイトをつくれる人だったら、アプリづくりにも挑戦してみようという気になるぐらいに簡単だと思います。あとお勧めしたいのは、頻繁にアプリの内容を更新する必要がある方。ネイティブのプログラムに比べて、ウェブベースのアプリなら更新が楽です。