現在、iPod touchの価格はアップルストアで32GBが2万9800円、64GBが3万9800円なので、まさに価格帯を合わせた感じだ。いうまでもなくiPod touchは通常音源対応なので、音質という面ではハイレゾ対応ウォークマンが大きくリードすることになる。
その他の機能的部分ではF880もZX1もAndroid端末なので、さまざまなAndroidアプリが動き、iOS搭載のiPod同様さまざまな用途に活用できる。さらにハイレゾ対応ウォークマンは NFCを搭載しているため、Bluetooth機器のペアリングなどに便利という利点もある。
●音楽好きなら注目せざるを得ないポテンシャル
今までもウォークマンにはiPodと比較して音質がいいという利点があったが、従来機種では対応する音源が同レベルだったため、iPodに対して大きなアドバンテージとはなり得なかった。しかし、ハイレゾオーディオに対応した現在、両者の音質の差は大きく、音楽好きのユーザーには無視できない違いとなったといえる。
実際に試聴したところ、256~320kbps程度のMP3やAACとハイレゾ音源との差は明白で、一つひとつの楽器の音の明瞭さ、音のキレ、高音の美しさなど、かなり違う。さすがにデータ量が音楽CDと比較して3倍以上、320kbpsのAACと比較すると実に約14倍なだけのことはある。この数年、デジタルポータブルオーディオの音質の向上は遅々たるものだったが、ハイレゾオーディオ対応で一気に加速度的な進化を遂げたといえる。これは大きな武器だ。
今後、再生音質を重視するポータブルオーディオユーザーは、ハイレゾウォークマンに注目することになるだろう。ハイレゾ対応ウォークマンは、ウォークマンのシェアをある程度押し上げるのは間違いない。当初は音質を気にするユーザーが主なターゲットとなるので、一気に世界的にiPodとのシェア逆転などは難しいだろうが、iPodがハイレゾ音源に対応しなければ、長期的に見るとウォークマンがiPodを追い詰めていく可能性はある。
ひさびさにソニーの本気を見た思いで、ポータブルオーディオの革新的な進化に感動しているユーザーは僕だけではないだろう。ハイレゾ対応ウォークマンは数年後に振り返ったとき、「あれがターニングポイントだった」と人々が思い出すような記念碑的な製品になる可能性があるのではないだろうか。
(文=一条真人)