「プリンタが暴走して……」製作者も意図しないウイルスが発症する珍事態
と言っても、プリンタが直接ウイルスに感染するわけではない。パソコンに感染したウイルスが、プリンタを勝手に作動させてしまうというものだ。
今年6月頃から、複数のセキュリティ企業のレポートにおいて、プリンタを勝手に操作する「プリンタウイルス」が報告されるようになっている。このプリンタウイルスにパソコンが感染してしまうと、意味不明な文字が大量にプリンタに送られ、多い時には数百ページもの印刷が行われてしまう。アメリカ、インド、ヨーロッパ、南米などで被害が広がっているほか、日本の企業でも被害が発生しているという。
うっかり感染してしまうと、目を離した隙に何百枚ものプリンタ用紙をムダに使われてしまうのだから、何とも厄介なウイルスである。ウイルスを仕掛けている危険なウェブサイトにユーザーがアクセスすることによって、このプリンタウイルスは拡散していると見られている。
ただ、インターネットセキュリティの大手であるトレンドマイクロ社のレポートなどを見ると、実はウイルス作成者の意図しないところで、このプリンタウイルスが“発症”してしまっているようだ。というのも、元々このウイルスは、感染したパソコンにアドウェア(広告を強制表示させる不正なプログラム)をダウンロードさせることを目的に作られているからである。
ところが、なぜかプリンタを勝手に操作する“機能”まで付いてしまった。ウイルスが間抜けにも自分自身を印刷ジョブに送りつけようとしていたためだ。これは、ウイルス作成者が意図しなかった挙動であると考えられている。
その結果、プリンタにはウイルス自身(プログラムの文字列)が送られ、大量の文字列が印刷されることになる。印刷されているのはウイルスという不正プログラムの文字列だから、普通の人が見ても何のことだかさっぱりわからない。意味不明な文字によって、貴重なプリント用紙が延々と埋められていくというわけだ。
こうしたプリンタウイルスは今に始まった脅威ではなく、2002年頃から同種のウイルスの存在が確認されているという。最近になって、それが再び世界的に広まっているのである。