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大阪市、新境地切り開く5億円投資 “異色”の起業支援、関西経済活性化の起爆剤に?

文=寺尾淳/ジャーナリスト
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「浪速のシリコンバレー」を目指して

 5月17日、橋下徹大阪市長が掲げる「大阪都構想」の賛否を問う「大阪市特別区設置住民投票」が行われた。大阪市民の審判は「NO」で、敗れた橋下市長は12月の任期満了をもって政界を引退すると表明した。

 その11日後の5月28日、大阪市経済戦略局からひとつの発表があった。「イノベーションが生まれる環境の実現に向け、大阪発のファンドが誕生しました」というタイトルで、起業支援のベンチャーファンドに大阪市が5億円を出資するという内容だ。

 投資先は、ベンチャーキャピタル(VC)のハックベンチャーズが設立したハック大阪投資事業有限責任組合で、出資者には大阪市、12.5億円を出資する独立行政法人中小企業基盤整備機構のほか、民間では3大メガバンク、積水ハウス、阪急電鉄、日立造船と、孫正義氏の弟・孫泰蔵氏が社長を務める投資会社Mistletoeが名を連ねている。この官民ファンドは、48億円でスタートし、今後、追加出資を募って100億円まで拡大させる狙いだという。

 母体のハックベンチャーズは、2013年に設立された新興VCで、ほとんどのVCが東京を拠点とする中、大阪市に本社を置く。代表の校條(めんじょう)浩氏は、コニカ(現・コニカミノルタ)の技術者出身だ。マサチューセッツ工科大学で工学修士号を取得後、ボストン・コンサルティング・グループを経て、シリコンバレーでベンチャー投資事業に携わった経歴を持つ。

 橋下市長に請われて大阪市の特別顧問を務め、「大阪イノベーション宣言」「大阪イノベーションハブ」など、大阪市が打ち出すさまざまなベンチャー支援策に関与してきた。

 ハックベンチャーズは公募で選ばれたが、大阪市が出資するベンチャーファンドは、校條氏にとっても橋下市長にとっても念願のプロジェクトといえる。

関西経済の活性化も狙い

 大阪市のベンチャー支援策の大きな特徴は、肥沃な土に植物が自然に生えてくるように、恵まれた環境の中で革新的なビジネスが自然発生的に生まれてくるような生態系モデル「イノベーション・エコシステム」を重視している点にある。

 それは、起業志望者だけでなく、起業家と連携したい大企業、彼らを支援したいメンター、彼らに資金を提供したい投資家などが集まり、マッチングして相互につながる状態を指す。

「起業には志もアイデアもカネも大事だが、芽を出せる環境、育つ環境も大事だ」という考え方が、その根底にある。大阪市が盛んに唱える「シリコンバレー・モデル」という言葉には、そんな意味も含まれている。

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