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「相馬勝の国際情勢インテリジェンス」

米国と北朝鮮、歴史的急接近…中国、金正恩に裏切られ米中貿易戦争敗北&習近平失脚の危機

文=相馬勝/ジャーナリスト
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米朝首脳が板門店で面会(写真:AP/アフロ)

 北朝鮮の非核化をめぐる米朝間の交渉継続を決めた電撃的な米朝首脳会談から1週間以上が経過し、両国の実務者協議の再開に向けて、北朝鮮側は非核化交渉の実務担当者として金明吉(キム・ミョンギル)前駐ベトナム大使を充てる方針を米側に伝達したようだ。金氏は1990年代以降に核開発をめぐる対米交渉に携わってきた外交官で、米国のスティーブン・ビーガン北朝鮮担当特別代表の交渉相手となるとも伝えられている。一方のビーガン氏もブリュッセルやベルリンを訪問し、欧州当局者や韓国の李度勲朝鮮半島平和交渉本部長らと会談するなど、両者の動きが急になってきている。

 しかし、中国の最高権力者である習近平国家主席は、トランプ・金正恩会談やその後の実務者協議の動きを冷ややかに見ているのは間違いないだろう。なぜならば、習氏は米朝首脳会談の10日前に平壌を訪問し、2日間で2回の中朝首脳会談を行っていながら、金氏からトランプ氏との交渉経過を明かされていなかったとみられるからである。

 習氏としては貿易戦争を戦っている米国を牽制し、中国の北朝鮮に対する存在感を誇示するために、大阪での20カ国地域(G20)首脳会議(サミット)での米中首脳会談の準備で忙しいなかにもかかわらず、国家主席としては13年ぶりにわざわざ北朝鮮を公式訪問した意味がなくなった。そのため、金氏に対しては怒り心頭のはずだ。米朝両国に裏をかかれ、中国は米朝交渉の仲介役として立場を失い、トランプ政権との交渉における「北朝鮮カード」を失ったことで、対米交渉に使えなくなってしまったからである。

中朝首脳会談が決裂

 実は、習氏が金氏から煮え湯を飲まされるような“裏切り”にあったのは、今回が初めてではない。この電撃的な米朝首脳の板門店会談10日前、6月20~21日に北朝鮮を公式訪問し、金正恩朝鮮労働党委員長と首脳会談などを行ったあと、中国側が用意した共同声明の案文をめぐって土壇場で決裂し、共同声明は発表できなかったのだ。

 習氏の北朝鮮公式訪問は中国の最高指導者としては13年ぶり。前回の胡錦濤主席(当時)による北朝鮮訪問では両国首脳が「経済技術協力協定」に調印しており、中国側は今回の習氏の訪問が成功したことを示すため、事前に共同声明の発表で北朝鮮側と合意していたにもかかわらず、北朝鮮が約束を反古にしたのだ。

 習氏と金氏は20日午後と21日午前中の計2回、首脳会談を行い、中国側は北朝鮮の非核化の進展を中心に話し合ったが、21日の2回目の首脳会談終了後、その共同声明の文言をめぐって両者の事務レベル協議が紛糾したのだ。

相馬勝/ジャーナリスト

相馬勝/ジャーナリスト

1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日計画』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。

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