相対的にリスクが小さい国内債券を減らし、「リスク資産」と呼ばれる株式への配分を増やした。厚生年金は今年第1四半期末運用資産額が141兆1209億円となっており、莫大な年金資金が市場に流れていることがわかる。
年金資金は、累積で約47兆円のプラス収益となっているが、それは株式の大暴落があれば簡単に消し飛ぶ可能性がある。例えば、国内株式に年金資金の11%を投入していた08年度、リーマンショックなどの影響を受けて9兆6670億円の赤字を出した。最大67%の資金を株式に投入するということは、金額にすれば約94兆円だ。全額が無価値になることはあり得ないだろうが、大恐慌などが起きれば半分ほどに目減りする可能性はある。そうなれば累積収益は0になる。
つまり、国民から預かっている資産でギャンブルをやっているようなものだ。
リスクの大きい運用をする背景には、まず年金資金の不足がある。運用して収益を上げなければ将来枯渇するのは確実だからだ。また、アベノミクスへの強い自信もある。アベノミクスの成長戦略は円安と株高が基盤となっているため、安倍晋三政権は今後も株高を維持するために注力するだろう。そこで、株高に期待を寄せた運用方針となっているのだ。
安倍政権発足時9000円台だった株価は、一時2万円を超えた。現在は1万8000円前後で推移しているが、中国市場の暴落や韓国経済不況、ほかにも世界各地で不況の種は多くあり、いつ暴落しても不思議はない。そのようななかで株式への投資を増やすのはリスクが高すぎる。万一、暴落した時にはどのように対処するのか、その際は誰がどのように責任を負うのかについて安倍首相は言及していない。
未来永劫安定して存続できる年金制度を確立するためにも、リスクを極力排除した制度運営をしてもらいたい。
(文=編集部)