本館とサテライトを結ぶ連絡通路に、快適でデザイン性に優れたトイレを設置した。トイレの個室もユニークだ。L字、T字などさまざまな形状の個室が並ぶ。ここはショールーム機能を果たしており、最先端のTOTO製品を体験できる。「日経アーキテクチュア」(日経BP社/2月25日号)はこう説明している。
「成田空港がトイレに力を入れる理由は、外国人から『日本のトイレの清潔さ』の評価が高いためだ。TOTOの調査によると『日本の公共トイレが自国と比べて清潔だ』と感じた外国人は94%に達した。空港という国の出入り口で心地良い体験をしてもらう。それが日本に対する好印象につながるとの狙いがある」
TOTOは1980年にビデ・スタイルのトイレ「ウォシュレット」ブランドを立ち上げた。ウォシュレットはTOTOの登録商標だが、今では高機能トイレの代名詞だ。おしり洗浄機能付きの便座は、創造力と気配りが生んだ最高傑作だ。内蔵されたビデは洗浄をスムーズにこなす。最新モデルは節水機能や脱臭機能、トイレから出ると自動的にふたが閉まる機能まである。日本製トイレは今や、ITを活用したハイテク製品なのである。
中国共産党が苦言
訪日中国人観光客の「爆買い」でおしり洗浄機能付き便座の人気は高い。電気炊飯器、空気洗浄機と並んで、中国人観光客の「新三種の神器」といわれている。2月27日付米経済専門紙ウォール・ストリート・ジャーナル日本版は、日本製の洗浄機能付きの便座に殺到する中国人に、共産党が苦言を呈していると報じた。
「共産党機関紙『人民日報』は論説で、『日本の便器はふたもいい匂いがするのか?』と問いかけ、日本の便座を買う中国人は『外国製品は中国製品よりも確実にいいと盲信している』と皮肉った」
さらに人民日報の国際版である「環球時報」も、「日本製便座の人気は誇張」と題する社説で、次のように皮肉っている。
「日本はかつて世界の家電市場を支配していたが、今では便座や炊飯器しか消費者から評価されておらず、このことは業界の衰退を象徴している」
日本製のハイテク便座は中国共産党を苛立たせ、日本政府は成長戦略にトイレを盛り込む。メイド・イン・ジャパンのトイレが政治を動かすまで進化した。
(文=編集部)