都の担当部署でも、そうした状況を早くから憂慮しており、逐一指導に努めてはいたものの、なかなか改善されず、始末書を提出させるなどしていた。15年度は、筆者が知り得た範囲だけでも、2社において8件の不履行が起きている。
不履行を指摘された受託企業は、始末書を提出している。だが、事態は改善されず、翌16年度にも、少なくとも3社で6件の不履行が起きていた。
下の書類は、偽装請負事件の翌年(16年度)のもので、都教委が根気強く指導したにもかかわらず、司書配置については一向に改善されている様子は窺えない。つまり、不祥事を起こした1社だけの問題ではなく、そもそも都立高校の学校図書館・民間委託のスキーム自体に無理があるのではないかと考えざるを得ない。
そのためか、これだけ不履行を起こしても、受託会社は契約解除されていない。ちなみに、16年度までは単年度契約のため不祥事に関係なく、翌年度は入札価格のみで業者を決定する流れである。
また、不履行があった日は、人員を配置していないのだから、当然、受託会社は人件費分相当の委託金額減額、あるいは返金すべきだが、関係者によれば、そのようなペナルティーは科されていないという。関係者のひとりは、こう証言する。
「当時、受託会社とは、『総価契約』であり、契約書やその詳細を記した仕様書には、不履行の場合の違約金や返金についての取り決めはされていませんでした。それを可能にした『単価契約』にしたのが17年度からでしたので、委託費の減額はされなかったはずです」
それが事実なら、結果、不祥事を起こしても人件費が浮いた受託会社は、その分を懐に納めていることになる。
都教委に確認すると、この関係者の証言を否定。「委託費の減額はした」との回答があったが、それを具体的に示す内容については明示しなかったため、現在、不履行による委託費減額について情報開示請求を行っている。詳細がわかり次第、続報でお知らせしたい。
それにしても、いったい、なぜ教育現場である公立高校の学校図書館において、こんな不祥事が次々と発生したのだろうか。
次回、都立高校の学校図書館関係者への取材によってわかった事実をつまびらかにすることで、このところ急速に進みつつある学校図書館の民間委託の実態に迫っていきたい。
(文=日向咲嗣/ジャーナリスト)