10月19日、注目の中国7-9月期GDP(国内総生産)が発表された。結果は物価変動の影響を除いた実質で前年同期比6.9%の増加だった。市場の予想は同6.8%の増加だったため、市場予想をわずかに上回ったものの、中国政府の通年目標の前年比7.0%増加を下回った。中国の成長率が四半期ベースで前年同期比7.0%を下回ったのは、リーマンショックの影響を強く受けた09年1-3月期以来、約6年半ぶり。
中国の経済統計、特にGDPは世界中が固唾を飲んでその発表数字を見守っている。今や中国の景気動向は世界中の市場に影響を与えるためだ。中国の経済統計が悪い数字であれば株安となり、世界株安に連鎖する。中国が対ドルでの元基準値を切り下げれば、株安の世界連鎖が起こる。
しかし、ここに大きな問題がある。中国国家統計局が公表する経済統計は経済実態を反映していない可能性が大きいのだ。つまり、信頼性が低いということ。特に、GDPに関する統計は実態を反映していない可能性が高いという。
ある中国当局関係者によると、「市、県、省と行政区が大きくなっていくごとに、国家統計局に報告される統計数字が改ざんされていく。これは、数字が悪いと地方行政の責任を中央から叱責されるため、水増しされた数字を報告してくることに原因がある」という。
この国家統計局の経済統計の信頼性が低いことを公言してしまったのは、現在の李克強首相。李首相は遼寧省の共産党書記時代の2007年、米国大使との話の中で、「自らは中国の公式統計を信用していない」と述べている。この時、李首相は「政府の公式統計は用いずに、企業が発表ベースとなっている工業電力消費量、鉄道貨物輸送量、銀行貸出残高の3つの指標に基づいて、中国の経済状況を判断している」と語った。のちに、英エコノミスト誌が中国経済の動きを見るために、李首相が用いた工業電力消費量、鉄道貨物輸送量、銀行貸出残高の3つの指標を使った指数をつくり「李克強指数」と名付け、広く使われている。
つまり、中国政府から出される経済統計は、中国首相までもがその信頼性に疑義を持つほど信頼性が低く、企業発表のデータから経済動向を類推するほうが、より中国の経済実態に近い可能性が高いということなのだ。