台風21号と低気圧の影響による大雨は再び、千葉県や福島県を中心に大きな被害をもたらし、10月28日正午現在で死者10人に上った。共同通信によると、この10人のうち5人が車で移動中に被害に遭い、冠水した道路で車内に閉じ込められるなどして亡くなったという。同通信では「台風19号でも、車に乗っていて洪水に巻き込まれるなどした人は、死者87人のうち約3割の25人に上った」と報道している。
そもそも自動車でも徒歩でも冠水している道路や川に近づかないのが最大のリスク回避になるのだが、ゲリラ豪雨や津波の場合、突発的に被害に巻き込まれることがある。
脱出用ハンマー常備を
では自動車運転中に台風やゲリラ豪雨、地震に伴う津波などに巻き込まれた時、どのようにすればいいのか。日本自動車連盟(JAF)では、冠水時に自動車のドアがどうなるのか実験している。
その結果をJAFは次のように解説する。
「(傘やスマホ、ヘッドレスト、キーなども試しましたが)狭い車内では力が入れにくいのに加えて、水没時は水の抵抗もあり、基本的には脱出用ハンマー以外のものでは割れません。万が一に備えて、脱出用ハンマーを車内の手に届くところに常備しておくことが大切です。脱出用ハンマーには、シートベルトを切る機能もあるので、シートベルトが外れない状況では切断することが可能です。脱出用ハンマーで窓を割る際には、窓の四隅のどこかを割ると効率良く割ることができます。
セダン、ミニバンともに『後輪が浮いている状態』では、車外の水位が高いためドアに外から強い水圧がかかり開けられません。セダン、ミニバンともに『完全に水没した状態』では、車内外の水位差が小さくなり、水の抵抗で重いものの、どちらのドアも開けることができました。ドアへの水圧によって、車外からドアを開けるのも困難になる場合があります。
水没時にドアも窓も開かない場合、車内外の水位の差が小さくならないとドアは開けることができませんでした。車両が前傾して浮いている場合、後席のドアなど水圧の影響を受けにくいドアから脱出を試みてください。アンダーパスなどの周囲より低い道路では、水かさが急激に増えて水没車両から脱出することが困難になることもあるので、安易に冠水路には入らないでください」
ハンマー付き発煙筒も
だが、脱出用ハンマーを準備していても、いつもダッシュボードなどすぐに取り出せる場所に保管している人は少ない。
東日本大震災の大津波時に、救助活動にあたった仙台市の消防職員は次のように話す。
「震災時、仙台港から内陸部に向かう各道路は、自動車で避難しようとした市民で大渋滞になっていました。その結果、津波襲来までに避難が間に合わず、多くの人々が自動車とともに津波に飲まれました。なんとか自力で脱出できた人の中には、脱出用ハンマーを持っていたけれど、トランクの工具箱に入れてあったりして使えなかったという人も多かったようです。
一方で、運転席や助手席の足元に据え付けられている発煙筒の先端キャップにドアハンマーが付いているタイプのものはうまく使うことができたようです。実際に窓を割って脱出に成功した例も複数ありました。
普段は邪魔で、見てくれが悪いのであまり車載している人は少ないかもしれませんが、持っているに越したことはない装備だと思います」
普段からの備えはやっぱり大切だ。
(文=編集部)