「週刊文春」(文藝春秋)で現金授受疑惑を報じられていた甘利明経済再生相が1月28日、内閣府で記者会見を開き、閣僚のポストを辞任する意向を表明。同日、安倍晋三首相が辞任を了承し、後任には石原伸晃元自民党幹事長を起用することを決めた。
安倍政権の屋台骨を揺るがすこの一件は、中国でも速報された。
1月28日付中国新聞網では、甘利氏がTPP担当国務大臣として各国との交渉にあたった経歴に触れた上で、「建設会社から5.5万人民元(約100万円)を受け取ったことを認め、閣僚を引責辞任した」と伝えた。
このニュースに意外な反応を示したのは、中国のネット民たちだ。
「日本は本当に貧乏だ。たった5.5万元で賄賂といわれるなんて」
「資本主義は万悪の源! うちの天朝(中国共産党の隠語)だったら、5500万元でも大丈夫だぞ!」
「中国では、こんなちっぽけな金額は官僚の一日の朝食代だよ」
「我が国なら、小さな農村の新入り役人だってもう少し賄賂をもらってるぞ」
中国版Twitterといわれる「微博」には、このように甘利氏が僅少な収賄額で辞任に追い込まれたことに驚きをあらわにしながら、ケタ違いの賄賂が飛び交う自国の政治に対して皮肉めいた書き込みが多数寄せられている。
また「賄賂は賄賂。金額の多寡ではない。この件には、日本に見習うべき点がある」という声がある一方、「この1万倍の賄賂を受け取る指導者と、こんなはした金で利用できる指導者。社会にとって、一体どちらが害悪なのだろうか」と、一国の大臣が少額の賄賂で特定の企業に便宜を図ることを問題視する見方もある。
中国会計検査院の統計によると、2015年に収賄や横領などの汚職にかかわった中国の公務員は101人で、彼らが不正に取得した金額は、1人当たり平均24億元(約430億円)に達している。そんな国に暮らす人々から見れば、甘利氏の一件は不可解極まりないのかもしれない。
(文=牧野源)