役人の不正蓄財や収賄、不正献金などは、世界中どこの国でも散見されることではありますが、韓国ではその割合が異常に高いのが特徴です。特に全斗煥(在任1980-88年)以降の大統領は、本人や親族にカネの問題が続いています。
また、2012年の国政選挙時には大規模な汚職が発覚し、与野党合わせて30人もの現職議員が起訴される事態となりました。
韓国行政研究院の「政府部門腐敗実態に関する研究報告書」によると、昨年、会社員600人と自営業者400人を対象に調査した結果、全体の53.8%が公務員に金品を渡す行為は「普遍的」だと答えました。韓国の国民は役人への貢物という感覚で賄賂を渡し、一方の受け取る側も、「地位が高い者は受け取って当然」という感覚さえあります。
そもそも、「賄賂は悪いもの」という感覚が薄いのです。法律で禁止されているので犯罪だとの認識はありますが、「賄賂は尊敬の証し」「賄賂をもらえない人間は尊敬されていない」という考え方が根強いのも事実です。
昨年起きた旅客船セウォル号沈没事故で、公職者が船会社と癒着して違法な営業を見逃していたとして、汚職の撲滅を求める世論に押し切られるかたちで「不正請託および金品など授受の禁止に関する法律」という金品の授受を禁止する法律が成立しました。
内容は、同じ人物から一度に100万ウォン(約11万円)以上、もしくは1年に計300万ウォン(約33万円)以上の金品や接待を受けたり、渡したりした場合、「3年以下の懲役または3000万ウォン(約330万円)以下の罰金を科す」というものです。 しかも、対象者は公職者に限らず、私立学校の教師など幅広い職種に及んでいます。そのため、法の抜け穴探しが活発化し、すぐに形骸化するだろうとの見方が多くあります。
お金があれば、有罪も無罪に
また、11年4月25日に法律専門市民団体が発表した、「法意識に関するアンケート」の調査結果では、77%の人が「韓国社会は法が守られていない」と答えています。さらに、42%が「法を守れば損をする」と回答しており、社会的に順法意識が低いことが明らかになりました。
それ以上に大きな問題なのは、8割以上の人が「お金さえあれば有罪も無罪になる」と考えていることです。事実、財閥の重鎮や大物政治家は汚職などで起訴されても、高い確率で無罪となり、有罪の場合でも執行猶予が付くケースがほとんどです。相当悪質な犯罪で懲役刑が科された場合でも、大統領の恩赦によって釈放されたことがあります。
ほかにも金持ちが優遇される傾向は顕著にあります。例えば、兵役がそのひとつです。韓国では19~29歳の間に約2年の兵役につく義務がありますが、財閥の御曹司などは兵役についていません。兵役免除については、病弱な人やオリンピックメダリストといった「国民的英雄」など、対象者が規定されています。それに含まれていない人物が兵役を免除されていることに対し、多くの国民から不満の声が上がり社会的に批判が高まっています。
まさに、韓国はお金がすべての社会です。特に今は、金の切れ目は親子であっても縁の切れ目となる時代です。儒教の影響から、成人した子どもは親を引き取り老後の面倒を見るのは当たり前だった時代は過ぎ去り、昨今は財産を持たない親は子どもに面倒を見てもらえなくなってきました。多くの資産をつぎ込んで育ててきたのに、老後の面倒を見てもらえないという理由で、実の息子を告訴した親がいます。同居を見込んで財産を与えたのに同居を拒否されたとして、財産返還の裁判を起こした親もいます。このような訴訟が日常的になっているのです。
今年5月、国際サッカー連盟(FIFA)の汚職事件が明らかになり、世界に激震を与えました。そのようななかイタリアメディアが、02年のFIFAワールドカップ・日韓大会において、イタリア対韓国戦の審判が韓国に買収されていた可能性を指摘し、物議を醸しています。
かねてからオリンピックや各種スポーツの世界大会で、韓国による審判買収は話題になりますが、その根源には韓国に広がる賄賂文化があるのは間違いありません。13年には米ロサンゼルスで、韓国の団体が市議会議員に多額の献金をする見返りに慰安婦像の設置を推進するよう求めていたことが明らかになりました。国内外を問わずカネの力で政治に働きかける韓国人に対する国際的な非難の声も増えています。
汚職の撲滅を掲げる朴槿恵政権が、今後どれほどの実績を挙げられるかは、韓国の国際的評価にも直結する大きな課題といえるでしょう。
(文=林秀英/ジャーナリスト)