果たして、新型肺炎の感染はどこまで広がっているのか。時事通信は19日、「中国の肺炎感染者、当局発表の30倍か 英研究チームが推計」と題する記事を配信した。記事では「中国湖北省武漢市で相次ぐ新型コロナウイルスによる肺炎について、英インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究チームは、感染者が中国当局の発表の30倍近い1700人に達しているとの見方を示した。人口などのデータを加えた推計という。英BBC放送が18日伝えた」と報じた。先週、中国版Twitterの微博(ウェイボー)では、感染の中心地と見られる武漢市の住民が書き込んだ救援投稿が突如として消去され、インターネット上では中国当局の情報統制が強まっているのではないかとの懸念がささやかれ始めている。
武漢市以外の中国各地で感染者が続出
毎日新聞社のウェブサイト「デジタル毎日」では20日、『中国の新型肺炎 北京と広東省でも患者 武漢以外で初 死者3人、発症201人に』という見出しで記事を公開。中国当局は「人から人への感染の可能性は低い」としていたが、拡大は止まっていない。同国の検査体制や受け入れ態勢が整ってきたため、新たに感染が判明した患者が増えているという報道がある一方で、長らく厳しい報道管制を敷いてきた同国に対する世界的な不信感は強い。
感染者の投稿が突如削除
台湾の大手紙「自由時報」インターネット版は17日、「病院の廊下に患者が横たわっている」という見出しで中国の肺炎に関する記事を配信。16日、武漢市の住民が投稿したウェイボーの書き込みを取り上げた。
同紙によると、投稿者の父親が9日に肺炎を発症。コンピューター断層撮影と血液検査の後、肺に影があることがわかり、武漢同済病院に行かなければならなくなったという。そのうえで、同病院の様子を「入院する患者は全員発熱患者であり、多くの人々が廊下の床に横たわっていました」と語った。「病院にベッドがなかったために父親が検診と2日間の注射を受けた後、医師の指示に従って家に帰って隔離するように指示された」という。
しかし症状は悪化。別の病院の紹介状をもらってようやく、新型肺炎患者が集められて隔離されている金銀潭病院に収容された。その後、母親と本人も肺炎を発症し、同病院に電話したが、「外来患者は受け付けていない」と、診療を断られたという。投稿は16日になされ、17日には削除された。
ウェイボーでは武漢市の医療スタッフを名乗る別の投稿者が「本当に恐ろしい。厳重に隔離した」という書き込みや、「武漢にいる家族全員が発症した」という書きこみなどがあった。
全国紙国際部記者は、次のように語る。
「中国当局がパニックになることを避けるため、情報統制を強めているとの感触を得ています。最初の新型肺炎の感染者が働いていた海鮮市場の周辺は、ほぼすべての店舗のシャッターが閉まり、完全にゴーストタウン化しているようです。
一方で、患者の渡航歴や発症までの足取りなど、周辺情報があまりにも少ないと思います。混乱を広めないように慎重になるのはわかりますが、中国メディアの動きが著しく鈍いのも気になるところです。当局の統制もさることながら、我々、日本メディアも状況が状況だけに、会社から現場に深く潜行するような取材を禁じられています。
中国は旧正月を迎え、これから数千万人とも数億人ともいわれる大量の旅行客が発生します。国際的に早急に取り組まなければいけない事案です」
(文=編集部)