2月11日、アインシュタインがその存在を予言していた「重力波」を、アメリカの大学の研究チームが初めて検出したというニュースが世界を駆け巡った。このノーベル賞モノの快挙は、当然ながら中国でも大きく報道された。
すると早速、中国の巨大インターネットショッピングサイト「淘宝網」に、重力波関連の商品が次々と登場した。香港のニュースサイト「東網」などが、その様子を22日付の記事で報じている。
その商品のひとつが「重力波防御マタニティドレス」で、値段は688元(約1万2000円)。ほかにも、「重力波防御シートパック」などがある。
さらには、“重力波輻射を防ぐ究極の神器”とうたう「愛陰湿毯」なる毛布が売られている。この名を中国語読みすると「アイインシータン」で、アインシュタインと同じだ。本来、アインシュタインの中国語表記は「愛因斯坦」だが、毛毯(中国語で毛布)の「毯」の字と引っ掛けたネーミングだ。しかも、「愛陰湿」という文字はどこか官能的で、商品紹介写真もそれらしき雰囲気を漂わせている。
これらを見た中国のネット民たちは、感心しているのかあきれているのか、「さすが、なんでもある淘宝網の名に恥じない品揃え」といったコメントにあふれている。
それにしても、重力波とはこのようにして防がなければならないほど人体に悪影響を与えるものなのだろうか。
愛陰湿毯の販売主の本業は靴下販売で、「愛陰湿毯が重力波を本当に防げるかなんて知らないよ。これは単なるお遊びさ」と、あっさり便乗商売であることを認めているという。
今のところ、これらの商品を買った人は現れていないようだ。結局、淘宝に出店している店舗側としては重力波という大きな話題に乗っかって自社ホームページへのアクセス数を増やそうとしているだけなのかもしれない。
毎度のことながら、中国人民の商魂と機に乗じる際の俊敏さには、あっけにとられるばかりだ。
(文=佐久間賢三)