愛知県蒲郡市で新型コロナウイルスへの感染が判明した50代の男性が、受け入れ先の医療機関が見つかるまで自宅待機するように要請されたにもかかわらず、飲食店を渡り歩いていたことが明らかになり、物議を醸している。
この男性は自宅を出てタクシーに乗り、飲食店を2軒巡り、そのうちの1軒で「新型コロナウイルスに感染している」などと語り、防護服を着た警察官が駆けつける騒ぎになった。しかも、家を出る前に「ウイルスをばらまいてやる」などと家族に話していたと報じられている。
その後、市は男性が訪れた飲食店を消毒し、当面の営業自粛を要請。さらに、濃厚接触したとみられる従業員や客にも自宅待機を要請した。その男性は翌日、愛知県内の医療機関に搬送されたという。
保健所は男性が立ち寄った飲食店の消毒をして営業の自粛を要請し、濃厚接触した従業員や客には自宅待機を求めている。
このように、自宅待機の要請を無視し、意図的にウイルスをばら撒くために外出した行為は、なんらかの罪に問われることはないのだろうか。山岸純弁護士に話を聞いた。
「家族に『ばらまいてくる』というだけでは、(ウイルスをばらまく対象が)家族に向けられたものでもないので『脅迫罪』にはあたりません。やはり、実際にウイルスに罹患させて初めて『傷害罪』が成立することでしょう。また、自宅待機要請も、現時点では強制力を伴うものではないので、これに反しても、残念ながら罪を問われることはありません。いずれにせよ、世間的にはふざけた野郎であることは間違いありません」(山岸純弁護士)
ウイルスの感染拡大を抑えるために、全国の学校に休校要請が出され、不要不急の外出を控えることが求められているなか、感染者があえて市中に出てウイルスを広めようとした行為に対し、インターネット上を中心に激しい批判の声があがっている。だが、それでも法的な処罰は難しいのが現状なのだ。
(文=編集部、協力=山岸純弁護士/山岸純法律事務所)