今年2月、鳥取県が制作した婚活促進のパンフレット内で「女性は受け身」と表記し物議をかもした。3月上旬、県民から「偏見がある」とクレームが入ったことが発端となり、回収騒ぎとなったのだが、この事件にはいまだに報道されていない大きな問題が隠されていた。在鳥取メディア関係者は語る。
「パンフレットは女性を対象に作成されたにもかかわらず、完全に男性目線のパンフレットに仕上がっていました。男性にとって理想の女性に関する項目には、時代錯誤も甚だしい『男性をたててくれる』『料理が上手』などが並び、一方、女性にとって理想の男性の項目には、『女性は元々受け身の性で男性側から積極的に愛情表現されたりアプローチをされると次第に相手の事を好きになるという傾向が男性よりも強いようです』と記載。男性主観が強くにじむ内容です。これには鳥取県の平井伸治知事も『もってのほかだ』と批判していました。その文章の内容も問題ですが、文章構成も行政が制作する資料とは思えないほど稚拙なものでした」
さらに、男性の理想の項目には「男性が女性に求めているものは癒しや安らぎです。リラックスできる人は男性にとって最も魅力を感じる女性で、一緒にいて安らげるような女性と結婚したいと考えています」と、平井知事の言葉を借りれば「戦前風」の理想像が羅列されていた。あるまじきことに、このパンフレットの制作は鳥取県法人会連合会に委託されたもので、県はノーチェックだったという。
「行政の責任が問われる問題ですね。不適切表現を見過ごし1万部が印刷され、県内の飲食店をはじめ約2000カ所に配布されました。さらに、制作したのは男性スタッフではなく女性スタッフだというから驚きです」(同)
県の杜撰な体制
では、なぜ女性がこうした内容のパンフを制作したのだろうか。鳥取大学地域学部地域文化学科の野田邦弘教授はこう解説する。
「都市化、近代化が遅れているからです。その背景にあるのが、人や物の流れ、流通の滞りであると思われます。新しい人が入ってくれば、新しい価値観も入ってくる。しかし、鳥取県は人の往来が少なく、新しい価値観も入ってこない。そうすると、年配者の意見が中心となり、封建的な社会になってしまうのです。その文化の中にいれば、女性であっても疑問を抱くことはないでしょう。また、鳥取では昨年も参加する男性は公務員限定の婚活イベントを開催しようとしたところ、市民から『婚活イベントに税金を使うな』と指摘があり、問題になったことがありました。今回もそうですが、組織がチェックする体制が整っていないのも大きな問題です」