訪日外国人旅行客(インバウンド)の急増が続いている。日本政府観光局の最新発表によると2016年3月の訪日外客数は前年同月比31.7%増の201万人。単月として初めて200万人の大台に乗せた。
今年に入ってからの数字を見ても、1月185万人(前年同月比52%増)、2月189万人(同36%増)、そして3月が201万人と絶好調が続いている。
今年1~3月期の訪日外国人全体の旅行消費額は9305億円(観光庁調べ)で、前年同期に比べ31.7%増と続伸した。しかし、一人当たりの旅行支出は16万円余りで同5.4%減となった。国内景気がパッとしないなか、依然としてインバウンド消費に依存せざるを得ない状況が続いていることは確かだ。
そんなインバウンド好況に突然、暗雲が立ち込めてきた。終息の気配が見えない熊本地震による影響である。観光庁は地震の観光への影響について、外国人団体客のキャンセルが熊本、大分両県だけでなく九州の他県でも出始めていることを明らかにした。実際に温泉地・大分県別府の有名ホテルでは、1日だけでキャンセルが1500人に上った。また、韓国釜山からのフェリー客も大幅に減少し、観光バスもキャンセルが相次いでいるという。
毎年20万人規模の観光客が訪れる長崎市の「長崎帆船まつり」(4月21~25日)では、入港セレモニーなどのイベントが取りやめとなった。
今回の震災は「前震」「本震」の2度の大地震に加えて、地震活動域の拡大など想定外の事態が続いていて、次に何が起こるかわからない不気味さがつきまとう。それだけに、外国人観光客だけでなく国内からのキャンセルも止まらない。観光地の苦悩は深まる一方だ。
九州の外国人入国者数は3年連続で高い伸び
九州の観光はここ数年、ずっと好調が続いてきた。国土交通省九州運輸局の調査によると九州の外国人入国者数は、2012年が115万人(前年比58%増)、13年が126万人(同9%増)、14年が168万人(同33%増)と3年連続で過去最高を更新してきた。15年は上半期だけで115万人(同53%増)と、さらに勢いがついていた。
「東南アジア各国に対するビザ発給要件の緩和や消費税免税制度の拡充などで、買い物と観光を兼ねたアジアからの観光客が急増しました。なかでも注目は、クルーズ船の九州各港への寄港実績です。クルーズ船での入国が増えたこともあって、15年の外国人客数は前年比2.7倍の112万人と急増しました。外国船社の運航するクルーズ船の寄港回数のトップは博多港で245回(14年は99回)、2位が長崎港で128回(同70回)、3位が那覇港で105回(同68回)と九州・沖縄が上位を独占しているのです」(観光業界に詳しいジャーナリスト)