新型コロナウイルスの感染拡大が収まらず、世界的にマスク不足も慢性化している。各国がマスクの増産に注力しているなか、“世界の工場”中国が驚異的な大量生産を行っているが、質の悪さを指摘する声が連日、各地から報告されている。
緊急事態宣言が出た都市圏のドラッグストアでは連日、マスクや消毒液を求める客が早朝から長蛇の列をつくり、対応に苦慮した店舗側が、朝からマスクを店頭に並べることをやめると発表する例が相次いでいる。だが、そうした店舗で、マスクが陳列されるまで商品棚の前に座り込む客や、一日中店舗内をうろつく客がいるといった報告がインターネット上にあがり始めている。
深刻なマスク不足を受けて、シャープやアイリスオーヤマなど異業種からもマスク生産に乗り出す企業が相次いでいる。それでも需要に供給は追いつかず、医療機関や介護現場でも十分な量は確保できていないのが現状だ。
そうしたなかで、中国から輸入しているマスクが問題視され始めている。政府は4月中に週3000万枚程度の輸入を目指すとしている。だが、中国メディア「財経天下」は8日、河南省の企業が製造したマスクの中にハエの死骸が混入しているのが見つかったと報じた。同企業は、主に医療機器や衛生材料を製造しており、マスクは海外にも輸出されているという。
中国製マスクについては、3月下旬にオランダが品質基準を満たしていないとして約60万枚をリコール対象とした。オランダ当局は中国製マスクについて「品質認証を受けているものの、きちんと装着できず、フィルターも機能していない」と批判。ほかにも欠陥を指摘する声が相次ぎ、欧州各国で中国製マスクを拒否する動きが出ている。
さらに、新型コロナウイルスの検査キットに関しても、中国製品は疑問視されている。
スペインは中国から検査キットを購入したが、正確な検査ができない欠陥品が約60万個混じっていたと指摘。同様にトルコでも欠陥のある検査キットが35万個見つかったと報告されている。
これらに加えて衝撃的だったのは、タイで販売されていた中国製品だ。劣悪なマスクや体温計、検査キットが中国から密輸されていた(https://thesmartlocal.com/thailand/fake-test-kits/)。
特に検査キットに至っては悪質で、他社製品より高めの販売価格にもかかわらず、不正確どころか必ず「陰性」と出るように設定されていたという。体温計も37度を超えないようになっており、実際に新型コロナウイルスに感染していても気づかずに拡散させかねない。実際に、「意図的にウイルスを拡散させようとしているとしか思えない」との声が飛び交っている。タイ当局は、これらの製品を密輸・販売していた男たちを逮捕した。
こうした各地での報道を受けて中国政府は、マスクや医療製品などについて、通関検査の必須対象として輸出制限を強化した。新たな検査が加わることによって、出荷プロセスにかかる日数が数日から数週間長くなる可能性があるとみられるが、何よりも品質が高まることを期待したい。
(文=編集部)