楽天はACSLの第三者割当増資を引き受けるともに、既存株主でジャスダックに上場している菊池製作所から持ち株の一部を譲り受ける。菊池製作所は福島県の南相馬工場で、ACSLが発注したドローンを400機生産する予定だ。菊池製作所は介護用のロボット、マッスルスーツを開発しているメーカーとして知られている。楽天のACSLへの投資額は5億円超、出資比率は2割超となる。
楽天は5月から、千葉県内のゴルフ場などでプレーヤーがスマートフォン(スマホ)で指示すれば、ドローンが食事やゴルフボールを運ぶサービスを始めた。
楽天がドローン企業に出資するのは、ACSLを早期に上場させて、新規上場時に高値で売り抜けるのが狙いであると見る向きが多い。
都心部でのドローン宅配は可能か
ドローンの関連市場は今後大きくなる見通しだ。調査会社のシード・プランニングは、15年に38億円だったドローンの機体とサービスの市場規模が、20年には634億円になると予測している。特にサービス分野が伸び、20年にはドローン市場の83%を占めると見ている。
ドローンは、もともと軍事利用のため開発され、戦場での偵察や戦闘行為に利用されてきたが、民間企業が開発に乗り出し、農薬散布や河川工事の点検、災害現場の調査などに利用されるようになった。
都心部でのドローン活用としては、宅配が注目されている。
通販大手のアマゾンは、13年にドローンの商業利用の計画を発表した。ドイツ輸送大手のDHLは、離島に緊急を要する薬品や衣料品をドローンで運んだ。
都心部でのドローン活用の先陣を切るのが宅配である。そのために、スーパーやネット通販の商品を高層マンションに運ぶ仕組みをつくるプロジェクトが始まった。配送の人員不足の解消やトラック輸送のコスト低減につながるというのが謳い文句だ。
安全性の確保が実用化に向けての最大の課題となる。都心部で墜落は絶対に起こしてはならない。墜落する確率が高ければ、都心部での飛行は認められないからだ。
ドローンで宅配というニュービジネスは、スマホゲームが出てきた時のような、「わくわく感」が乏しく、インパクトに欠ける。物珍しさで終わる可能性は否定できない。ドローンの活用は、農業用、防災工事用、テレビクルーによる秘境などお宝映像の撮影から根付くのではないだろうか。都心部でドローンを商業利用するのは、高いハードルを乗り越えなければならない。