小型無人機、ドローンを使った宅配ビジネスが第一歩を踏み出した。
国家戦略特区となった千葉市が4月11日、幕張副都心でドローンによる宅配サービスの実証実験を行ったのだ。イオンモール幕張新都心の屋上から、150メートル離れた豊砂公園へドローンを飛ばし、カゴに入ったワインが割れていないか確認した。飛行時間は2分間だったという。
また、幕張新都心にある高さ35メートルの10階建てマンションの屋上に、近隣の空き地からワインを運ぶ実験もした。
いずれの実験でも、ドローンはあらかじめ設定したルートを全地球測位システム(GPS)で確認しながら自律飛行して、再び離陸地点に戻った。今後は月1回のペースで実験を重ね、天候が飛行に与える影響などを調べる。
国と千葉市は、2019年までにスーパーマーケットやインターネット通信販売の商品を、高層マンションが林立する幕張新都心の各戸のベランダにドローンで直接届ける仕組みを構築する計画だ。プロジェクトには、楽天、イオン、佐川急便、ウエザーニューズなど10社が参加した。
果たしてドローン宅配は、ニュービジネスとして成立するのだろうか。
楽天が千葉大学発のベンチャーに出資
この実験では、ドローン研究の第一人者、野波健蔵・千葉大学特別教授が社長を務める自律制システム研究所(ACSL)の機体を使用した。
野波氏は、1972年に福井大学工学部機械工学科を卒業、79年に東京都立大学(現・首都大学東京)大学院博士課程を修了後、千葉大学工学部機械工学科の助手になった。NASA(米航空宇宙局)研究員、千葉大学工学部助教授などを経て、94年に千葉大学工学部教授に就任。2014年に定年退職し特別教授となり、ドローン開発を手掛ける千葉大学発ベンチャーの自律制御システム研究所(ACSL)を立ち上げた。
野波氏は80年代から自律制御ロボットの研究を開始。90年代半ばから紛争地に残された地雷の撤去や海底測量、送電線の高所点検作業向けの作業用ロボットを次々と開発した。05年にマルチローターヘリの自律制御研究を本格化させ、大小さまざまな研究モデルをつくった。自律型マルチローターヘリが、現在のドローンといわれるものだ。
資本金1億1200万円のACSLは3月、楽天と東京大学エッジキャピタルから合計7億2000万円の出資を受けると発表した。